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リヒテルが1991年に遺したバッハの諸作品の録音について(1) [私の好きなピアニスト]

以前の記事でも簡単に紹介しましたが(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2022-03-17、20世紀を代表する名ピアニストであるスヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter 1915〜1997年)は、1990年以降、リサイタルでの演目にバッハのフランス組曲、イギリス組曲をはじめとするバッハの諸作品を頻繁に加えるようになりました。特に1991年(当時、リヒテルは75〜76歳)にはバッハの作品を欧州各地やモスクワの演奏会で集中的に演奏し、多くのライブ録音やスタジオ録音が遺されています。

これらの演奏は、フィリップス、ストラディバリウス、そしてLive Classicsなどのレーベルから出ているのですが、今回はフィリップス盤についてご紹介したいと思います。フィリップスでは、ドイツのボン/ロランドセック(1991年3月)とノイマルクト(1991年11月)でのライブ録音がCD三枚に纏められています。たしかこのCDセットを入手したのは(私がドイツに赴任していた)1990年代半ばかと思うのですが、それ以来、25年以上の長きに亘って、今でも私(そして妻)の愛聴盤となっています。

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こちらが私が持っている「Richter The Authorised Recordings BACH」(CD三枚組、フィリップス)。現在は分売もされています。

この録音は状態も良く、また、入手しやすいこともあって、晩年のリヒテルのバッハ演奏を聴くのに最適なものかと思います。イギリス組曲第3、4、6番、フランス組曲第2、4、6番(リヒテルはフランス組曲についてはなぜか偶数番の曲のみを演奏しています。なぜ奇数番号の曲を演奏しなかったのかは謎のままです。)、そしてトッカータ(2曲)、ファンタジア、イタリア協奏曲、フランス風序曲、四つのデュエットが収められているのですが、どれも、本当に素晴らしい演奏でバッハの深淵な音楽世界を存分に堪能することができます。

リヒテルのバッハ演奏の特徴といえば、やはり、その超広大なスケール感です。聴いているうちに自身がまるで宇宙空間に放り出されているような不思議な感覚をいつも味わいます。こんな気分を感じさせるのはリヒテルだけです。バッハのピアノ演奏における音楽芸術の極致といって良いかと思います。もうこれまで何十回も聴いているかと思うのですが、まったく飽くことがありません。

是非一度、これらのリヒテルの録音を聴いてみて下さい。クラシック音楽を鑑賞して本当に良かったと実感されるかと思います。


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