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リヒテルが1991年に遺したバッハの諸作品の録音について(2) [私の好きなピアニスト]

前の記事から「リヒテルが1991年に遺したバッハの諸作品の録音について」と題した記事を投稿しておりますが、前回のフィリップス盤に続いて今回はストラディバリウス盤についてご紹介したいと思います。イタリアのクラシック音楽レーベル、ストラディバリウスからは、チェコやハンガリー、スイス等でのライブ音源やイタリアでのスタジオ録音がCD(四枚)に纏められています。どの盤も録音も良く、入手は少々困難なものの、フィリップス盤と同様、万人にお勧めできる録音となっています。

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こちらがストラディバリウス盤の四枚

収録されている曲はフィリップス盤を重なるもの(録音日時は異なります)が多いのですが、1991年6月にイタリアでスタジオ録音されたソナタ三曲(BWV 963,964,966)とカプッチョ(BWV 993)、イギリス組曲第一番といった、フィリップス盤では収録されていないバッハ作品の演奏を聴くことが出来るのが特徴です。

中でも、「Sviatoslav Richter Un Homme DE Concert 3」に収められている、(先に述べた)ソナタ三曲(BWV 963,964,966)とカプッチョ(BWV 993)の演奏、そして「Sviatoslav Richter Un Homme DE Concert 5」に収められている、1991年4月のチェコスロバキアでのライブ音源であるイギリス組曲第4、6番の演奏は、特に素晴らしいものです。例えばイギリス組曲第4、6番のサラバンド、第6番のドゥーブルといった、静かな曲におけるリヒテルの落ち着いた演奏は、まさに「深遠」という言葉がぴったりなもので、聴いているものを深い瞑想へと誘ってくれます。その余りに広大な音世界、沈黙こそが語る音楽表現には深い感動を覚えます。

是非、機会を見つけてこれらの演奏を聴いてもらいたいと思います。ここには、まさにバッハのピアノ演奏の極致が示されています。


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