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リヒテルが遺したラフマニノフの前奏曲集の演奏について [私の好きなピアニスト]

以前、「リヒテルについての思い出」そして三回に亘って「リヒテルが1991年に遺したバッハの諸作品の録音について」と題した記事を投稿しましたが、アルトゥール・ルービンシュタイン(Arthur Rubinstein 1887〜1982年)、ウラディミール・ホロヴィッツ(Vladimir Horowitz 1903〜1989年)と並んで、20世紀最高のピアニストと称されるスヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Richter 1915〜1997年)が遺した多くの録音の中でもバッハと並んで最良のものの一つが、ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873~1943年)の前奏曲(抜粋)の録音です。

特に1971年、リヒテルが56歳の時にザルツブルクのクレスハイム城で録音した前奏曲集(13曲)は名演の誉れ高いものです。私はこれまで国内盤としてビクターから発売されたレコード、そしてその後、英オリンピア盤での、1984年のミュンヘンでの録音「音の絵」全18曲のなかから9曲の録音と共に収められたCDなどで、折にふれて聴いてきました。ちなみにこの英オリンピア盤は現在は入手困難ながらも、現在ライセンスを取得しているアルト・レーベルから同じものが発売されています。また、このCDに収められている「音の絵」の演奏も素晴らしいものです(ちなみに無類のクラシック音楽好きで知られる日本共産党の志位委員長も以前、紹介した雑誌「BRUTUS」のクラシック音楽特集の中で、リヒテルのこの曲の演奏を推薦していました。私がこの雑誌について書いた記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-06-01)。

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こちらは私が横浜の自宅に保管している国内盤のCD。既にオリンピア盤を持ってはいたものの、この国内盤レコードと同じジャケットデザインが懐かしくて、CDまでも中古で入手してしまいました(汗)。ちなみに私の持っているのはリマスター盤です。

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そしてこちらがオリンピア盤。前奏曲については同一録音です。

また、1960年に行なわれたリヒテル(当時45歳)のアメリカ・デビュー・ツアーでのカーネギーホールでのラフマニノフの前奏曲の録音(選曲は1971年のものと同じ)も遺されています。私はこのカーネギーホールでのライブ音源(CD6枚組)も持っているのですが、演奏自体は素晴らしいものながら、(1971年の方が録音状態が良いので)専ら1971年の方を聴いています。ただ、1960年盤もライブということもあって、独特なテンションと観客の熱狂状態が伝わってくるのでこちらも必聴と言えるかもしれないです。

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こちらが私が持っている1960年のアメリカデビュー、カーネギーホールでのライブCD(CD6枚組)。たしか購入したのが1990年代、私がドイツに赴任していた時ですので、表にはっている値札はドイツマルクですね。それにしても6枚組にしてはとても安いです。当時の私は、この安さにつられて購入したものと思われます(汗)。

他にも1959年録音の、1960年と1971年には録音されていない前奏曲2曲の録音もあるとのことですが私は未聴のままとなっています。

リヒテルの弾くラフマニノフの前奏曲は、その圧倒的にスケールの大きな、ダイナミックレンジを広い、完全に曲を掌握しきった演奏となっているのが特徴でして、ラフマニノフのピアノ芸術の極致と言っても良いものとなっています。他のピアニストの演奏と聴き比べてみると、リヒテルの演奏の方が遥かに恰好良いことに気付かれるかと思います。何回聴いてもしびれます。これを超える演奏はもう現れないのではないかと思わせるものがあります。

もし、聴いてないようでしたら是非、一度聴いてみて下さい。20世紀のピアノの芸術遺産の中でも最良のものかと思います。


こちらがYoutubeにアップされている「Rachmaninov - Preludes - Richter studio 1971」


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