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イブラギモヴァ(Vn)のバッハ無伴奏ソナタ&パルティータ集を聴いて [音楽を聴いている]

全6曲からなる、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ集はすべてのクラシック音楽を愛する者たちにとって、重要かつ特別な曲であることは異論のないことだと思います。シゲティ(Joseph Szigeti 1892~1973年)を始め、色々なヴァイオリニストたちの演奏を聴いてきましたが、これまで良く聴いてきたシェリング(Henryk Szeryng 1918~1988年)のDG新録音盤に加え、最近では、ルミニッツァ・ペトレ(Luminitza Petre)の自主製作盤やクレーメル(Gidon Kremer 1947年~)のECM新録音盤等を愛聴していました。そんな中、今回、イブラギモヴァ(Alina Ibragimova 1985年~)が2009年に録音したソナタ&パルティータ集を聴いてみました。
このロシア出身の若き女性ヴァイオリニストの、これまでのヴァイオリニストとは次元の異なる、素晴らしい演奏には本当にびっくりしました。一言でいえば、とても透明感がある演奏とでも言えば良いのでしょうか? これまで、耳を澄ませなければ聴くことすらできなかった「音楽」が、彼女の演奏には、当たり前のようにきちんと存在し、そして見事に展開されています。演奏者の作品に対するスタンスが極めて現代的で、そのため、作曲家と演奏者という二元的な構造は、既に姿形もなくなっていて、聴いているうちに、自分が直接バッハ自身と向かい合っているような、そんな錯覚に陥ってしまいます。これまで、例えば名演奏として知られるシェリングの演奏等を聴いていると、演奏者が作品に真正面から向かい合い、解釈し、乗り越えていくような、そんな弁証論的なアプローチを強く感じます。これはペトレ、クレーメルでも、シェリングほどではないにせよ、演奏者の存在というものを常に意識しながら、演奏を聴くことには変わりはありません。しかし、このイブラギモヴァの演奏には、まったく(演奏者の存在が)感じられないのです。これはとても驚くべきことです。ビブラートを排した、とてもピュアーで美しい弦の音、驚くべき音程の正確さといった、テクニックの素晴らしさも、そうした想いを強くさせているのかもしれません。
アマゾンのレビューで、とある方が評していましたが、まさに21世紀の今を代表する演奏だと思います。彼女の今後の活動からは目が離せません。早いうちに、一度、是非、なんとかして生の演奏を聴いてみたい(昨年11月に来日してバッハの無伴奏を弾いているのですよね。聴きたかったなあ~)、そんな思いに久しぶりに駆られました。

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写真はイブラギモヴァ(Vn)「Bach Sonatas & Partitas for Solo Violin」(CD)

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