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昨日、会社の執務室で南波永人著「ピアノマン」を読み終えました [本を読んでいる]

昨日の午前中に、会社の執務室でジャズ音楽小説「ピアノマン: 『BLUE GIANT』雪祈の物語」(小学館)を読み終えました。この小説は、石塚真一氏の漫画「BLUE GIANT」シリーズや映画「BLUE GIANT」の編集者・原作者・脚本家である「NUMBER 8」氏こと南波永人の小説でして、

『BLUE GIANT』もうひとつの物語
沢辺雪祈は、言葉を覚えるより先に音を覚えた――。
幼い頃、音が「色」に見えた少年は、やがてジャズの魅力に取り憑かれ、運命の仲間たちと出逢う。目指すは日本一のジャズクラブ「ソーブルー」での10代トリオ単独公演!
ただ真っ直ぐに、ただただ真摯にピアノと向き合い続ける青年は、夢の舞台で磨き上げたソロを響かせ、喝采を博すことができるのか!?
大人気コミックのストーリーディレクターが魂を込めて書き下ろすフルボリューム音楽小説!!
漫画でも映画でも描かれなかった『BLUE GIANT』もうひとつの物語。
(以上、「Amazon」商品紹介文からの引用)

というものです。「もうひとつの物語」とありますが、大まかな筋は漫画及び映画「BLUE GIANT」に沿ったものとなっており、ストーリー自体は真新しいものではありません。ただ、小説全体がジャズピアニスト。作曲家の沢辺 雪祈(さわべ ゆきのり)の視点から描かれていること、そして(漫画や映画では描かれていない)彼が上京する前の、長野県松本市での幼少期から高校卒業までの物語が書かれていることとが大きな特色となっています。

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南波永人著「ピアノマン: 『BLUE GIANT』雪祈の物語」(小学館)の表紙

また、漫画や映画ではサラリとしか描かれていなかった話の舞台裏や、新たなエピソードなども書かれていて、「BLUE GIANT」ファンには必読の小説となっています。ただ、原作漫画や映画より先に、この小説を読むのはお勧めできないです。漫画や映画を読んだり観たりした後に、じっくりと、この小説を読んで、登場人物(特に沢辺 雪祈)の隠れた心情を理解するのが良いかと思います。

しかし、本当に感動的な物語です。漫画を読んだ時、映画を観た時にも感涙してしまいましたが、この小説を読んだ時も、思わず感激してしまい、また感涙してしまいました(汗)。ジャズを志す若者三人の青春小説として、とても魅力的かつ印象的な小説だと思った次第です。

こうして私は、「BLUE GIANT」を漫画、映画、小説のそれぞれで楽しむことができました。面白かったです。

ちなみにこれまで私が「BLUE GIANT」について書いた記事は以下の通りとなります。興味のある方は是非読んでみて下さい。

「横浜の老舗のJAZZ喫茶店で石塚真一の「BLUE GIANT」を読みました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2018-06-24
「石塚真一のジャズ漫画「BLUE GIANT SUPREME」を読み始めました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2019-06-18-1
「石塚真一の漫画「BLUE GIANT SUPREME」が完結し、新たにアメリカ編となる「BLUE GIANT EXPLORER」が始まりました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-12-09
「石塚真一の漫画「BLUE GIANT EXPLORER(3)」を読み終えました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2021-08-10-1
「映画「BLUE GIANT」を観ました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2024-03-31
「石塚真一/NUMBER 8の漫画「Blue Giant Explorer 9」「Blue Giant Momentum 1」を読み終えました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2024-04-12


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三浦しおん著「舟を編む」を読み終えました [本を読んでいる]

昨日、会社の執務室で三浦しおん著「舟を編む」(光文社)を読み終えました。今年2月からNHK-BSで放送中の同名ドラマを見て、原作の小説も読んでみたいと思ったところ、ちょうど家に本があるよと妻から聞き、さっそく読んでみたという訳です。内容は、

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!(以上「Amazon」商品紹介文からの引用)

というもので、とても読みやすく、そしてハートフルな小説でした。元々、この小説は女性向けファッション雑誌「CLASSY」において2009年11月号から2011年7月号に連載されたものでして、そうしたことも、この小説の持つ読みやすさや独特のテンポ感に繋がっているように思えます。

「良い小説を読んだなあ」というのが読後の私の素直な感想です。充実した読書体験を得ることができました。ありがとうございました。

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三浦しおん著「舟を編む」(光文社)。今は光文社文庫において文庫化もされています。ちなみに三浦しおんさんですが、私の次女の中学・高校の先輩でして、出身大学は学部こそ違うものの私と同じです。


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新大阪に向かう新幹線の車内で千葉雅也著「現代思想入門」を読み終えました [本を読んでいる]

2月2日の金曜日、仕事で新大阪に向かう新幹線の車内で千葉雅也著「現代思想入門」(講談社現代新書)を読み終えました。この本は1960年代から90年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」哲学の入門書です。三巨頭であるジャック・デリダ((Jacques Derrida 1930〜2004年)、ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze 1925年〜1995年)、ミシェル・フーコー(Michel Foucault 1926〜1984年)の思想を中心に、それらの思想の源流となったニーチェ、フロイト、マルクス、そして現代思想と切ってきれない関係にある精神分析学者のラカン、ドクマ人類学という新たな領域を切り開いたルジャンドル、そして三巨頭の後、「ポスト・ポスト構造主義」の哲学者であるハーマン、ラリュエルといった思想家たちの思索を、非常に分かりやすく解説しています。

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千葉雅也著「現代思想入門」(講談社現代新書)

私は大学時代、浅田彰(あさだ あきら 1957年〜)の「逃走論」(1984年)や中沢新一(なかざわ しんいち 1950年〜)の「チベットのモーツァルト」(1984年)に夢中になった世代ということもあって、一種の懐かしさを感じながら、この本を読みました。

今の若い人たちにとって、こうした「ポスト構造主義」が、どのように捉えられているのかは分かりませんが、こうした現代哲学の試みというのはとても大切にすべきものではないかと思います。その意味において、この新書の持つ意義は大きいと感じました。

特にこれまで私があまり知らなかったラカンの精神分析における思想が、分かりやすく解説されていたのは嬉しかったです。そして私が非常に感じ入ったのは、本書の129P「物語的意味の下でうごめくリズミカルな構造」という部分です。これは私の雑感ですが、現代カルチャーにおいて「物語性」というのは、特別な意味を持っているように感じられます。ありとあらゆる「物語」が満ち溢れる、この現代において、その文脈の下でうごめいているリズミカルなものの動きを感じ取るセンスと根性こそが、今、私達に求められているのではないかと思いました。

また、この本では、これらの思想を解説する多くの入門書が紹介されています。これから折を見て、こうした入門書を読んでみようと決意した次第です。

「本書で紹介されている主な現代思想の入門書」
 私が勝手に抜き出したものですので、もしかしたらもれなどあるかも知れません。
 その点、ご容赦ください。
 飯田隆「規則と意味のパラドックス」(ちくま学芸文庫)
 東浩紀「存在論的、郵便的-ジャック·デリダについて」(新潮社)
 高橋哲哉「デリダ-脱構築と正義」(講談社学術文庫)
 芳川泰久・堀千晶「ドゥルーズ キーワード99」(せりか書房)
 檜垣立哉「ドゥルーズ 解けない問いを生きる」(ちくま学芸文庫)
 国分功一郎「ドゥルーズの哲学原理」(岩波現代全書)
 宇野邦一「ドゥルーズ 流動の哲学」(講談社学術文庫)
 慎改康之「ミシェル・フーコー-自己から抜け出すための哲学」(岩波新書)
 原和之「ラカン-哲学空間のエクソダス」(講談社選書メチエ)
 向井雅明「ラカン入門」(ちくま学芸文庫)
 片岡一竹「疾風怒涛精神分析入門-ジャック・ラカン的生き方のススメ」(誠信書房)
 松本卓也「人はみな妄想する-ジャック・ラカンと鑑別診断の思想」(青土社)


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上田紀行著「愛する意味」を読み終えました [本を読んでいる]

12月は、やはり師走ということもある上、15日から19日にかけて九州の実家に帰省したりしたこともあって、例月と比べて、かなりバタバタした毎日を送っています。このブログにおいて、私はなるべく時系列に記事を書くよう心掛けてはいるのですが、今月の出来事に限っては、書きやすいものから記事化することにします。何かと読みにくいかとは思いますが、何卒、ご容赦の程、宜しくお願いいたします。

先週の金曜日(12月22日)に、文化人類学者、医学博士で、東京工業大学教授の上田紀行(うえだ のりゆき 1958年~)の「愛する意味」(光文社新書)を読み終えました。この本はネットで紹介されているのを知り、興味を持ち、図書館で貸出予約をして借りてきたものです。内容は、

日本人が幸せになれないいちばん大きな原因は「愛していない」ことにあります。多くの人たちが「愛すること」よりも「愛されること」を優先してしまっている。恋愛でも、社会に対しても、常に周囲からの評価が気になってしまう。しかし、「愛されたい」「評価されたい」ということへの執着は、あなたをとても不自由にします。――感動のロングセラー『生きる意味』出版から14年。生きる意味の核心である「愛」についての熱い提言!(以上「Amzaon」商品ページにおける紹介文からの引用です)

というものでして、とても分かりやすくて読みやすいエッセイでした。

今の日本は、資本主経済システムの徹底した浸透により、「幸せ」の度合いさえも金銭で測るような風潮になってしまっています、その上、キリスト教のような一神教による「神からの絶対的な承認」も無い中で、人は「(他の人よりも)愛されたい(=承認されたい)病」に罹っているのではないかという問題提起は、とても説得力があります。そして、こうした社会システムから逃れ、自分自身を取り戻す心の動きである「愛すること」が必要なことだと筆者は説きます。

こうして私が書くと、まるでなにかの新興宗教のスローガンのように聞こえてしまいそうですが(汗)、本書はそんなことは全く無く、ある意味、とても論理的であり、説得力があります。私は思わず首肯した次第です。

「愛」という言葉は、今の日本人にとって、非常に難しい言葉の一つかと思います。本来(というか、絶対的に)愛は無償のものですが、今どき「無償の愛」と言われても、多くの方は、母親が自らの幼い乳飲み子に対して持つ愛情くらいしか、想像できないものになっているのかも知れません。現代社会という、様々な評価システムの中でがんじがらめになってしまっている私たちにとっては、他者に対して無償の愛を捧げるという行為自体、無理があるというか想像できないという方も多いかと思います。それは、とても勇気のいる行為であり、一歩間違えれば、自身が社会から孤立してしまったり、人生そのものを誤ってしまう危険すらあります。そうしたことも全て理解した上で「愛する」ことができる大人になって欲しいとこの本は説きます。それはある意味、とてもアナーキーでありながら、自我を回復し、幸せになる唯一の方法なのかもしれません。

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上田紀行著「愛する意味」(光文社新書)


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佐川恭一のデビュー作である「終わりなき不在」を読み終えました [本を読んでいる]

先ほど、会社の執務室で佐川恭一のデビュー作である「終わりなき不在」(ネコノス文庫)を読み終えました。この本も、いつもの会社の同僚(後輩)が貸してくれたものです。内容は、

就職した銀行を一年で辞め、仕事も恋人も失った自堕落な青年は小説家を目指す。その果てに何が待っているかも知らずに……。「文章を書くためだけに脳をカスタマイズされ他の能力を全てスポイルされた俺という怪物の書く小説が、なぜ他者の作品に劣るのか?」迷走する自意識、崩壊するモラトリアム。これは悲劇か?それとも喜劇なのか?泣いた方がいいのか?笑っていいのか? 渦巻くような自意識の階層構造に、やがて読者の意識も翻弄されていく……。(以上、Amazonの商品ページの紹介文からの引用です)

というもので、第3回日本文学館出版大賞ノベル部門大賞を受賞しています。小説自体は、小説家を目指す主人公、吉川雅樹の行動や考え方の発露を軸に、彼の書いた小説「仕舞」、そして彼に関わる登場人物それぞれ立場から、それに対する反応(思い、感情)が語られるといった構造になっています。

さすがというべきか、私自身、この小説の持つ、有無を言わせない力の虜となり、一気に読み終えました。本当に面白いというか、とても刺激的な小説でして、何とも言えない疾走感が感じられます。本当に彼の文学的才能には驚嘆するばかりです。

私は、これからも折にふれて彼の著作を追いかけることになりそうです。

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佐川恭一著「終わりなき不在」(ネコノス文庫)


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宮藤官九郎著「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)」を読み終えました [本を読んでいる]

先日、自室で宮藤官九郎著「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)」(文春文庫)を読み終えました。この本も、最近、いつも本を貸してくれる会社の同僚(後輩)が貸してくれたものです。内容は、

冬の白鳥だけが名物の東北の町で、筋金入りのバンカラ高に通う「僕」。先輩からイビられる非モテの日々―地元のローカル番組で「おもしろ素人さん」を募集しているのを見つけた僕は、親友たちの名前を勝手に書いて応募するのだが…。「あまちゃん」の脚本家が放つ疾走感溢れる“地元系”青春エンタメ。
(以上、Amazonの商品の説明「内容(「BOOK」データベースより)」からの引用です)

でして、作者自身の高校生時代を描いた自伝のような小説らしいのですが、この(童貞)小説はとても面白かったです。その上、なんというか、文章のテンポが良くて、読んでいて気持ちが良かったのが印象的でした。著者には優れた文才があるんだなぁと感心した次第です。

還暦を過ぎた私ですが、こういう小説を読んでいると、いつの間にか自身の青春時代に戻ったような気分を味わうことができます。なんだか少し元気を貰いました。ありがとうございました。

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宮藤官九郎著「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)」(文春文庫)


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新感覚文豪ゲームブック「ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言」(佐川恭一著)を読み(?)ました [本を読んでいる]

最近はよく、会社の同僚(後輩)が貸してくれた本を読んでいます(汗)。今度は佐川恭一の最新作となる新感覚文豪ゲームブック「ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言」を貸してくれました。前にも書きましたが、以前、彼に「清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた」を勧めたところ、読んで、いたく気に入ってくれたらしく、佐川恭一の著作を手に入れては、こうして私に貸してくれます。有り難いというか、彼の厚意にはただただ感謝するばかりです(ちなみに、前回、佐川恭一著「アドルムコ会全史」を読んだ時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2023-09-08

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佐川恭一著「ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言」(中央公論新社)

佐川恭一の最新作ということで、かなり期待して読んで(というか、遊んで)みたのですが、正直言って、あまり面白くなかったです(涙)。ゲームブックですので、ショートストーリーを読み、その後の展開を選択肢から選んで、その選択肢が指示するショートストーリを読む行為を続けていくことになるのですが、当然、どちらを選択するかは読者に任されています。結果、ゲームオーバーになったりしますし、エンディングにたどり着いた場合でもマルチエンディングになっていて、真のエンディングにたどり着くまで、先に述べた選択を何回も繰り返すこととなります。

問題は、このゲームブックにおけるそれぞれの選択肢が、その後のストーリーを大きく変えるに値するような意味をあまり持ち得ていないように思われることです。また、真のエンディング(本書では「芥川賞受賞」)までたどり着く過程こそが、著者が読者に一番伝えたかったことだと思うのですが、そうだとすると、そのストーリーは、私には薄っぺらなものに感じられて仕方がありませんでした。

面白い試みであることは認めますが、少し空回りしているような印象を受けました。「なんだか、とてももったいないなぁ…」というのが、私のこのゲームブックに対する感想です。

今回は、私にとっては期待を裏切る結果となってしまいましたが、佐川恭一氏のこれからの活躍(著作)には引き続き期待しています。彼は私が今、もっとも注目している日本人作家です。


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松尾スズキ著「クワイエットルームへようこそ」を読み終えました [本を読んでいる]

これも少し前の話になってしまって恐縮ですが、松尾スズキ著「クワイエットルームへようこそ」(文春文庫)を読み終えました。この本は、以前同じ著者の小説「老人賭博」を貸してくれた会社の同僚が貸してくれたくれたものです(「老人賭博」を読んだ時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2022-07-21。今回読んだ本は、

恋人との大喧嘩の果て、薬の過剰摂取で精神病院の閉鎖病棟に担ぎ込まれた明日香。そこで拒食・過食・虚言・自傷など、事情を抱えた患者やナースと出会う。普通と特別、正常と異常…境界線をさ迷う明日香がたどり着いた場所はどこか?悲しくて笑うしかない、絶望から再生への14日間を描いた、第134回芥川賞候補作。
(以上、Amazonの商品ページ「内容(「BOOK」データベースより)」からの引用)

といった内容のものです。私が驚いたのは著者の見事な筆力でして、主人公(女性)の視点と考え、そして思いなどがが見事に捉えられています。そのせいか、読んでいて、いつの間にか主人公に感情移入してしまっている私がいます。また、ストーリー自体も、面白いものでして読後感は(内容自体は暗いものにもかかわらず)爽やかなものでした。ちなみにこの小説は著者自らの脚本・監督で映画化(2007年公開)もされています(私はまだ観ていません)。

中編小説といっても短めで、軽く読めると言ってしまえばそれまでですが(汗)、私はこの著者の才能に好感を覚えました。また機会があれば彼の別の著作も読んでみようと思った次第です。

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松尾スズキ著「クワイエットルームへようこそ」(文春文庫)


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佐川恭一著「アドルムコ会全史」を読み終えました [本を読んでいる]

先ほど、会社の執務室で、佐川恭一著「アドルムコ会全史」を読み終えました。この本はネットで古本を安く手に入れたものでして、中編小説となる「アドルムコ会全史」「パラダイス・シティ」「ブライアンズタイム」、短編小説「キムタク」そしてショートショートの「夏の日のリフレイン」が収められています(前回、佐川恭一著「シン・サークルクラッシャー麻紀」を読んだ時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2023-09-03

安月給の工場で働く男がかつて自ら考案したデタラメな宗教に翻弄されていく「アドルムコ会全史」、個人の幸福度を計測できるようになった社会の公務員たちの働きぶりを描く「パラダイス・シティ」、ひとりではガールズバーにもいけない小心者の男の心の内面を描く「ブライアンズタイム」の書き下ろし長編、他短編2編を収録。荒唐無稽な展開と不謹慎な冗談が固定観念を壊してくれると同時に心の暗部を照射する。
(以上、出版元「代わりに読む人」HPにおける佐川恭一著「アドルムコ会全史」紹介文からの引用です)

正直、なかなかキツい小説ばかりで読んでて辛くなります。と言っても、内容が難解だとか読みにくいとかいうのではなく(逆にとても読みやすく、テンポよく読むことが出来ます)、登場人物たちの考えや行動が、あまりに人間的というか卑俗的で、彼らの織り成すドタバタ人生劇が、読んでる私自身の色々な嫌なところを拡大して見せられているような気分になるからです。

「パラダイス・シティ」「ブライアンズタイム」では、多くの登場人物が出てくるのですが、それぞれが様々な意味で俗悪的なキャラクターとして描き分けられれていて、それらが絡み合いながら、悲劇的ともいえるストーリーをテンポ良く成していく様は、本当に刺激的です。

一方、「アドルムコ会全史」は、何とも奇想天外なストーリーなのですが、何故か違和感なく、その小説世界に引き込まれました。とてもポップなように見えて、実際はディープな物語です。このような小説を書く著者の才能には驚嘆させられました。

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佐川恭一著「アドルムコ会全史」(代わりに読む人)

9月21日には彼の最新本「ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言-~新感覚文豪ゲームブック~」が発売されるようです。どんな本なのか、まったく見当もつかないのですが(本当にゲームブックかどうかも分かりません)、発売日に本屋で手に取ってみようと思っています。私にとって佐川恭一氏は、今、一番注目している日本人作家です。


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佐川恭一著「シン・サークルクラッシャー麻紀」を読み終えました [本を読んでいる]

木曜日の午後、会社の執務室で佐川恭一著「シン・サークルクラッシャー麻紀」を読み終えました。前に同じ著者の別の小説「清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた」を読んだことを書きましたが(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2023-06-26、あまりにもくだらなくて面白かったので、会社の同僚にも勧めたところ、すっかり気に入り、さっそく彼は本書を購入したものの、先に読む本がまだ沢山あるとのことで、「焦燥する中年男さん、お先にどうぞ読んでください」と親切にも貸してくれました。お言葉に甘えてお借りして、こうして読み終えた次第です。

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佐川恭一著「シン・サークルクラッシャー麻紀」(破滅派)

この小説は、二つの小説が入れ子構造のようになっています。どうも以前、彼が書いた小説「サークルクラッシャー麻紀」と「受賞第一作」が組み合わされ、合体して本書となっているようです(私は「サークルクラッシャー麻紀」も「受賞第一作」も読んでおりませんので、これは憶測です。もし、間違っていたらご指摘頂けると助かります)。

私にとっては、彼の初めての長編小説だったのですが、中だるみすることもなく、一気に読み終えました。この小説においても、独特の佐川ワールドは堅持されていて、途中、思わずお腹をかかえて笑ってしまったり、また鋭い指摘に深く納得したりと、存分に楽しむことができます。いやあ、本当に面白かったです。ますます彼のファンになりました。

この小説のラストシーンはシンプルながらも、何とも感動的で、ストンと腑に落ちます。思わず感嘆してしまいました。彼の才能には本当にいつも驚かされます。

私の住むところにある図書館では蔵書検索しても「清朝時代にタイムスリップしたので科挙ガチってみた」と「シン・サークルクラッシャー麻紀」しか見つからないので、これからは彼の著作を読もうとすると、残念ながら本を買うしかなさそうです。それでもどうしても読んでみたくなって、先程、佐川恭一の顰蹙必至異色長編3編他が収録されているという「アドルムコ会全史」(中古本)をネットで注文したところです。

ここのところ、今年7月にポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago 1922~ 2010年)の「見ること」、8月には台湾の客家出身の小説家、甘耀明(カン・ヤオミン Yao Ming Kan 1972年~)の「真の人間になる(上・下)」といった具合に、私の大好きな小説家の作品が次々を出版されていています。ちょうどこれから読書の秋を迎える中、私の場合、本に困ることはなさそうです。今からワクワクしています。


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