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バッハのシャコンヌの演奏について [音楽を聴いている]

前の記事でイブラギモヴァが2009年に録音したバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ集のことを書きましたが、この中でもパルティータ第2番の終曲(5曲目)であるシャコンヌ(Chaconne)は、この曲集の中でも特に有名かつ特別な曲です。

この曲はシャコンヌの名称どおり変奏曲の形式を持つが、ニ長調の中間部を有する三部形式とも取れる。音楽的な構成としては、冒頭の4小節に現れる低音の下行テトラコードをシャコンヌ主題とし、種々の変形を受けながらこの主題が64回現われ、そのたびに上声を連続的に変奏しながら壮大な建築を作りあげる変奏曲となっている。シャコンヌの主題は三重音・四重音を多用する。非常に難易度の高いことで知られ、ヴァイオリニストの技量や表現力が問われる曲である。
(以上「Wikipedia」からの引用)

このようにヴァイオリンの最高傑作として知られるこの曲を、私が、(きちんと)初めて知ったのは、イタリアのピアニスト兼作曲家のブゾーニが編曲したピアノ独奏曲としてでした。高校生のときに初めて聴いたミケランジェリの演奏(1948年録音EMI盤)は、録音は古いながらも、なんともモダンで、当時の私でも思わず「かっこいいっ!」と唸ってしまうほどの内容で、その後、ルービンシュタインの演奏も聴きました(これも良い演奏です)が、やはりミケランジェリの、あの、なんともスタイリッシュな演奏が私の頭の中で、未だにデフォルトとなっています。
その後、シェリングの新録音(DG盤)で、本来の、ヴァイオリンでの演奏にも親しむようになり、少しマニアックなところではティボール・ヴァルガやジョコンダ・デ・ヴィート、ヨハンナ・マルティなど、これまでいろんなヴァイオリニストの演奏を聴いてきました。その中で一番印象に残った演奏というと、「アート・オブ・ヴァイオリン」という、20世紀の偉大なヴァイオリニストたちの貴重な演奏映像を収めたDVDの最後で、ユーディ・メニューイン (Yehudi Menuhin 1916~1999年)が、独りでこの曲を弾くシーンです。
1972年(ですので、メニューインが56歳の頃)のグシュタートでの映像ということで、もう既に、ヴァイオリニストとしての最盛期は過ぎ、技術的にも衰えが目立つメニューインなのですが、独り、全身全霊をかけて演奏している姿と、そこに聴くことができる音楽は、本当に感動的で素晴らしいものです。ヴァイオリニストであり音楽家だったメニューインという一人の人間の人生そのものを、この演奏に重ねて観てしまうのか、私はこの映像を観る度に、訳もなく、胸が熱くなって涙が溢れそうになります。機会があったら、是非一度、観てみてください。

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写真は「アート・オブ・ヴァイオリン」(DVD)。ウジェーヌ・イザイや ヨーゼフ・シゲティ、ジネット・ヌヴー、マイケル・レービン、ヨーゼフ・ハシッド等の貴重な映像も観ることができまる上、若きヒラリー・ハーンの、こうしたヴァイオリニストの演奏に対する素直なコメントも楽しむことができます。クラシック音楽、特にヴァイオリン好きの方には必見のDVDです。


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