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水村美苗さんの「母の遺産-新聞小説」を読み終えました [本を読んでいる]

今週の水曜日の夜、居間のソファーで、水村美苗さんの「母の遺産-新聞小説」を読み終えました。この本は、最初、私の姉が読み、そして姉に勧められた母が読み、そして今回、九州の実家に帰省した私が、母の勧めで読んでみたものです。内容は、

家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。『本格小説』『日本語が亡びるとき』の著者が、自身の体験を交えて描く待望の最新長篇。
(「BOOKデータベース」からの引用)

とのことですが、三代にわたる女系家族それぞれの人生、特に母と娘の確執、恋愛・結婚生活における様々な問題点を、時代の変遷と共に、鋭く、そして深く、描きながら、女性の生き方を問う教養小説という感じですね。また一部、作者の近代日本文学論も含まれていて、なかなか奥の深い小説でもあります。とはいえ、私は男なので、正直、あまりに「おんなおんな」した、その内容に戸惑う部分もありながら、女性って、(男性をはじめとする)物事をこんな感じで捉えているんだというのも分かり、とても興味深く読むことができました。でも、素直に考えてみると、この小説の言っていることって、結局、地獄の沙汰も金次第ということなのでしょうか?(苦笑)
もともと読売新聞に掲載された新聞小説ということで、こうして通して読んでみると、途中で、ちょっと、間延びした部分もあったようにも思えるのですが、それでも、一気に読ませる、作者の、その筆力はすごいと思いました。
人(母)に勧められない限り、自分で手にとって読む本ではなかったと思います。そういう意味では、貴重な読書体験を得ることができて、嬉しかったです。それにしても、姉が母に、この小説を読んだらと勧めたというのは、母と娘の関係が非常に健全だという証だとは思いますが、それなりに凄いことだなあと思った次第です。

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写真は水村美苗「母の遺産-新聞小説」(中央公論新社) 。男性と女性の恋愛観の違いみたいなことで、一つ私見を申し上げると、女性の場合、愛されているかどうかが最大のポイントになるようですが、男性の場合、愛されているかどうかよりも、(その女性を)愛しているかどうかが、本人にとって、とても大きなポイントになっているような気がします。これが近代日本(男性)文学の大きなテーマになっていることは、漱石をはじめ、色々な文学作品が証明していると思うのですが、如何でしょう?

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