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今度はルプーの弾く、シューベルトの楽興の時とピアノソナタ第19番を聴いてみました。 [音楽を聴いている]

以前、ルプーが1982年に録音したシューベルトの即興曲(全8曲)を久しぶりに再聴し、とても感銘を受けたことを書きましたが、これに味をしめて、今度は同じシューベルトの、楽興の時とピアノソナタ第19番が収録されたCDを、代官山の蔦屋書店で借りてみました。これまでシューベルトの楽興の時とピアノソナタ第19番の演奏については、ユーリ・エゴロフ(Youri Egorov, 1954~1988年)のライブ録音(同録音がCANAL GRANDEと蘭PHILIPSから出ています)が私にとって印象深いものでして、特に楽興の時については、前にも書きましたが、最後のリサイタルでの演奏ということもあり、死を前にした深い哀しみと澄み切った想いが込められた、まさに白鳥の歌ともいえる感動的な演奏となっています。
今回、期待を込めて、ルプーの演奏を聴いてみたのですが、楽興の時については、抒情性に溢れた、とても良い演奏だと感じたものの、ピアノソナタ第19番については、ピアノソナタの演奏としては一部破綻しているというか、首をかしげるものでした。特に第二楽章のテンポがゆっくりすぎて、全体のバランスを崩しているように感じました。これに比べると、エゴロフの演奏は、テンポ設定も適度で、非常に説得力のあるものとなっています。ライブならではの高揚感も加わっていて、これ以上の演奏はないのではとも思えます。

シューベルトのピアノソナタは、いずれも構成力というか、曲全体をいかに纏めるか、その能力が問われる、演奏者にとっては極めて難しいものだと改めて思った次第です。前にも書きましたが、エッシェンバッハが2010年以降に録音したピアノソナタ21番(第2楽章は特にテンポを落として演奏していますが、ピアノソナタ全体の構成までは崩れていません)と、この、エゴロフの弾く19番以外で、これまで「これだっ!」という具合に感心した演奏は、実はありません。これまでシューベルトのピアノソナタというと、ケンプ、内田、エッシェンバッハ、ブレンデル、リヒテル、グルダ、ヘブラーといった、限られたピアニストの演奏しか聴いていないことも一因かと思いますので、これから、少し積極的に、例えばポール・ルイスといった、色々なピアニストの演奏も聴いてみようと思います。こうして書きながら思ったのですが、ルプーの場合、(彼の弾くシューベルトのピアノソナタは)生で聴くと、だいぶ印象が変わるような気もします。CDだけでは掴みきれないピアニストかもしれませんね。

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写真はルプー 「シューベルト:楽興の時、ピアノ・ソナタ第19番」(CD)。実は、私は1990年代半ばにアムステルダムで、ルプーのピアノ、ジュリーニ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の、モーツアルトのピアノ協奏曲(何番かは忘れてしまいました)を生で聴いているのですが、まあ、それなりに良かったという印象はあるものの、特別な印象は残っていません。(汗)確か、一番前の席だったこともあって、ルプーの足元しか見えなかったのですが、非常に細かくペダリングをしていたことだけ覚えています。(こらこらっ)

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