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行きつけのジャズ喫茶店で、スティーヴ・エリクソンの「ゼロヴィル」を読み終えました [本を読んでいる]

昨夜、一人で訪れた蒲田のジャズ喫茶店(「直立猿人」)で、アメリカ、カリフォルニア州出身の小説家、スティーヴ・エリクソン(Steve Erickson 1950年~)の2007年の小説「ゼロヴィル」(原題:Zeroville)を読み終えました。

スティーヴ・エリクソンは私にとって特別な作家です。確か10年ほど前、40代の初めに、ふとしたきっかけで彼の5作目となる小説「Xのアーチ」(原題:Arc d'X)を読み、その想像力溢れた幻視作家としての才能に、まさに驚嘆しました。それからは「彷徨う日々」(原題:Days Between Station)、「ルビコン・ビーチ」(原題:Rubicon Beach)、「黒い時計の旅」(原題:Tours of the Black Clock)等の小説、そしてアメリカ大統領選を取材した珍しいノンフィクションルポとなる「リープ・イヤー」(原題:Leap Year)を夢中になって片っぱしに読んだことは懐かしい思い出です。

ちょうど一年前の12月にニューヨーク・ロサンジェルス出張の際に、ニューヨークの本屋でこの「ゼロヴィル」の原書は購入していた(その時の記事はこちら→http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2016-01-28のですが、そのまま部屋に積んだままとなっていました。今回、柴田元幸氏の訳による翻訳本が出ている事を知り、慌てて図書館で貸出予約をして、なんとかこうして読むことができたという次第です。

この「ゼロヴィル」という小説は、

「映画自閉症」の青年ヴィカーは、映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーを、自分のスキンヘッドに刺青している。フィルム編集の才能が買われ、ハリウッドで監督作品を撮ることになるが…。『裁かるゝジャンヌ』、『めまい』、『ロング・グッドバイ』…映画と現実が錯綜する傑作長篇!(以上「「BOOK」データベース」からの引用)

とのことで、「ラテンアメリカ文学の影響も感じさせる文体を持つ「幻視の作家」として知られ、その作風は縦横無尽に展開される想像力による幻想的な光景の描写、歴史の再構築、黙示録的なイメージの提示などによって特徴付けられる」(以上、Wikipediaの「スティーヴ・エリクソン」の解説文からの引用)スティーヴ・エリクソンの、ポップともいうべき新境地を強く印象付ける小説となっています。読みやすく、またとても面白かったというのが最初の読後感でした。そして、この「映画小説」ともいうべき「ゼロヴィル」は、2015年にアメリカで映画化されています。まさしくメタ化とでもいうべき現象ですが、是非、この映画も観てみたいものです。

ここのところ、あまり本を読んでいなかったのですが、今回、素晴らしい読書体験を得、やはり小説は良いなあと再確認したところです。調べてみると、未読である、彼の最新作となる「きみを夢みて」(原題:These Dreams Of You)も既に邦訳が文庫化されていますね。今度はどんな世界を見せてくれるのでしょうか?今から、読むのが本当に楽しみでなりません。

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写真はスティーヴ・エリクソン「ゼロヴィル」(白水社)


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