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妻に誘われて、東京、サントリーホールで行われた「亀井聖矢凱旋リサイタルツアー2023」の最終日の公演を聴きに行きました [演奏会ノート]

少し前の話になりますが、8月9日の夜に妻に誘われて、東京、サントリーホールで行われた「亀井聖矢凱旋リサイタルツアー2023」と名付けられた公演を聴きました。

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亀井聖矢(かめい まさや 2001年~)は2022年11月に行われたロン=ティボー国際コンクールで第1位となった(評論家賞、聴衆賞も同時受賞)、新進気鋭のピアニストです。今回のリサイタルツアーは、その名の通り、ロン=ティボー国際コンクール第1位受賞の凱旋公演でして、昨日は、その最終日の公演となります。テレビで彼のことを知った妻が興味を持ちチケットを購入、私を誘ってくれたという訳です。
当日のプログラムは以下の通りでした。

ショパン:     3つのマズルカ 作品59
          幻想曲 作品49
          アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズ 作品22
ラヴェル:     ラ・ヴァルス
          亡き王女のためのパヴァーヌ
ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章

(アンコール)
ショパン:     ポロネーズ第6番「英雄」 作品53
リスト:      ラ・カンパネラ
バラキレフ:    東洋風幻想曲

恥ずかしい話ながら、私はこの日まで、亀井聖矢というピアニストのことをまったく知りませんでした。最近では、多くの若手の日本人ピアニストが出てきて、色々と話題になっているようですが、私は全く、そうした話題についていけてませんでした。正直、まあ話題にはなっているものの、テクニックはあるんだろうけど、そんなに大したことないのではとさえ思っていました。

そんな、なんとも失礼な私だったのですが、2曲目の幻想曲の演奏、特に最後の弱音部の演奏を聴いたあたりから、私は彼の演奏の素晴らしさに瞠目することとなりました。「もしかしたら、今、私は物凄い才能を持ったピアニストの演奏を聴いているのかもしれない」と思い始め、その思いはラヴェルの演奏を聴いた時に確信へと変わりました。

テクニックが凄いのは言うまでもないのですが、なんといっても音楽性が非常に高いというか、別次元と言ってもよいほどの純度の高さです。私は彼の演奏に夢中になって耳を澄ませました。

コンサート終了後、私は妻に、このコンサートに連れてきてくれたことに心からの謝意を述べました。彼の今後が本当に楽しみです。その後、彼のことをネットで色々と調べてみると、彼の手は本当に大きくて26.3cm開き、ド~ソの12度届くとのこと。まるでラフマニノフかリヒテル並みの大きさです。彼の演奏を聴いていて、何となく感じていたことに、今、具体的なイメージが重なりました。そう、彼の演奏は20世紀を代表する名ピアニスト、スヴャトスラフ・リヒテル(Sviatoslav Teofilovich Richter 1915~1997年)の音楽にとても似ているのです。曲を大きくひとからげに捉え、その中で豊かな音楽を紡いでいく。速くて複雑なパッセージを完璧なテクニックで弾くのは当たり前ながらも、緩徐部における比類のない美しさは、まさにリヒテルです。

Youtubeには彼の多くの演奏がアップされていて、どれも素晴らしいものばかりなのですが、その中でもベートーヴェンのピアノソナタ21番「ワルトシュタイン」の演奏には驚かされました。特に4分足らずながらも、第二楽章の演奏の素晴らしさをどう表現すれば良いのでしょうか。聴いていると、時空が歪んで、あたかも時間の感覚が失われてしまうような感覚を味わうことができます。このような演奏をしたピアニストが、これまでいたでしょうか。本当に凄いとしか、言いようがないです。

こうして、私は、今後、世界的なピアニストになることが確実と思われる、若き日本人ピアニストの演奏を聴きました。本当に幸せな時間を過ごすことができました。ありがとうございました。


こちらがYoutubeにアップされている「ベートーヴェン:ワルトシュタイン (L.V.Beethoven : Sonate für Klavier Nr.21 "Waldstein" C-Dur Op.53) /亀井聖矢」


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