普段、セイコーのロードマーベル36000／SSという手巻きの腕時計をしています

普段、腕時計は、社会人になった時に父から譲ってもらったセイコーのロードマーベル36000／SSという手巻きの時計をしています。実はこの時計、一度紛失しており、10年程前にオークションで全く同型の時計を落札し、現在はこの時計を使っています。この型は1967年に発売され、1978年に製造終了となったそうですので、40年程前の時計ということになりますが、入手してから一回も修理に出すことなく、今でも正確に時を刻んでくれます。
昔から父はこの時計がお気に入りだったようで、よく自慢していました。それを、私が社会人になった記念に譲ってもらった時は、本当に嬉しかったです。しかしながら、たしか社会人になって三年後位だったでしょうか？　職場の野球大会（昔はこういう催しが会社の福利厚生行事として良く行われていました）に参加したときに、突然の豪雨と共に、私はこの時計を失くしてしまいました。それ以来、このことは、父に対する、私の最大の秘密となりました。帰省した時に父から「今、していないようだけど、俺のあの時計、大切に使っているのか？」と聞かれたらどうしようと、長い間、思い悩み続けました。ところが、十年ほど前にインターネットオークションで検索してみたところ、同型の時計が出品されている事を知り、狂喜乱舞しながら落札し、再度ロードマーベルを所有することができました。そして、その後、帰省した時に、落札した同型の時計を見せながら、父に、昔父から譲ってもらった大事な時計を失くしたことを初めて告白し、謝りました。
年老いた父は、その時計を私に譲ったことすら忘れていて、「そうだったのか～」と答えるだけで、気負っていた私を拍子抜けさせました。その時は「父も、自分の自慢の時計の事を忘れるなんて耄碌しちゃったな～、あんなに思い悩まければ良かった」などと思っていたのですが、もしかしたら、あれが父の優しさだったのかもしれないと気づいたのは最近のことです。
この時計は全数字のインデックスと絹目のダイヤルが、とても上品な感じで、私のお気に入りです。性能的にも36000という文字が国産初のハイビート・ムーヴメントを搭載したモデルであることを控えめに主張しています。これまで何度か、時計好きの方に「良い時計をしていますね」と言われたことは、私の秘めた自慢の一つです。私はこの時計を普段使いの時計として、これからも大事に使っていきたいと思っています。


写真はセイコー ロードマーベル36000／SS。私は使い易いようにステンレスベルトにして使っています。