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アート・ファーマの「おもいでの夏(The Summer Knows)」はとても素敵なワン・ホーンのジャズの一枚です [音楽を聴いている]

もう、30年程前になりますが、私は大学時代、姉と一緒に東京都葛飾区お花茶屋の、とあるアパートに下宿していました。どちらかというと珍しい京成線沿線に下宿していたのは、姉の通っていた東京藝術大学が上野にあった事からなのですが、そのためか、このアパートには多くの藝大生(芸高生も)が下宿していました。そして夜になると、よくみんな(殆どが私よりも年上の先輩たち)で集まっては、夜な夜な、とりとめもない話をしたのは、(当時の私にとって)とても刺激的な体験で、今でも大切な思い出の一つです。当然、話はクラシック音楽の事がよく話題になっていたのですが、よく集まっていたメンバーの一人(声楽科テノール)がエレクトーンの即興演奏で世界大会で入賞(たしか2位だったと思います)する程の腕前だったこともあり、クラシック以外の音楽の事も時には話題になりました。そして、その中で教えて貰ったレコードがアート・ファーマー(Art Farmer 1928~1999年)の「おもいでの夏(The Summer Knows)」です。

この録音は、日本のレコード会社の自主企画物なのですが、選曲、演奏共にとても素晴らしいものです。特にアート・ファーマーの吹くフリューゲルホルンの音色はとても暖かいもので、シダー・ウォルトン、サム・ジョーンズ、 ビリー・ヒギンズといったサイドメンたちも、控えめながらとても良いサポートをしています。ジャケットの印象から、とても軽いジャズのような誤解を与えるかもしれませんが、是非一度聴いてみて欲しい、本格的なワン・ホーン・ジャズの名盤です。

最近、会社の同僚たちと、昔通った高田馬場のジャズ喫茶を借りきって、ささやかなパーティを開くイベントが行われたのですが、そこでも、ちょうど私のような世代にとっては、ちょうど我々の大学時代に出たレコードということもあるのでしょう、このレコードの事が話題になりました。そこで私は20年ぶりにこの録音を入手し、もう一度聴き直してみました。聴くやいなや、(自身の)大学当時の思い出が鮮やかに蘇ったことにびっくりすると共に、何一つ変わらないアート・ファーマの人柄がにじみ出たような音色に、私はまた魅入られた次第です。大学時代の思い出も含め、これからも大切にしたい、私の宝物の一枚です。

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写真はアート・ファーマの「おもいでの夏(The Summer Knows)」(CD)

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