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エルヴェ・ル・テリエ著「異常(アノマリー)」を読み終えました [本を読んでいる]

ここ二週間ばかり、いつもの悪い癖でブログの更新を怠っておりました。記事にしたいことはいくつかあるのですが、まずは昨日、会社に向かう通勤電車の中で読み終えた海外小説のことを、読後感や印象が薄まらない内に紹介したいと思います。

読んだ本は、パリ生まれのフランスの作家兼言語学者、エルヴェ・ル・テリエ(Hervé Le Tellier 1957年〜)の「異常(アノマリー)」です。2021年のゴンクール賞、ベストスリラー2021を受賞した、フランスで110万部を超えたベストセラー小説となります。

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エルヴェ・ル・テリエ「異常(アノマリー)」(早川書房)

私にとって、本格的な海外小説を読み終えたのは約1年半ぶり、イギリスの作家、マーセル・セロー(Marcel Theroux 1968年 - )著「極北」を読んで(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2021-05-24以来となります。実はその間も、何度か本格的な海外小説を読むべく、図書館から何冊か本を借りたりしていたのですが、いつも途中で挫折したり、本を開くことすらなく、そのまま返却するのが常となっていました。言い訳めいた弁解になりますが、加齢のせいか、自身の読書力(知力や忍耐力、想像力)が低下しているようでして、このままだと、もう小説を読むことすら出来なくなっているかもしれないという、強い危機感を抱いておりました。こうして何とか読み終えることができて、正直なところ、少しホッとしているところです(汗)。

この小説は、設定はかなり突飛というか、まさしく「異常」の名にふさわしいものながら、サスペンス小説よろしく読みやすく、私自身は、それほど躓くことなくスラスラと読むことができました。ゴンクール賞に相応しい文学性を備えているかと問われれば、答えに窮しますが、とても現代的かつ普遍的なテーマを扱った面白い小説との印象を持ちました。

小説の内容については、Amazonの商品ページには、

殺し屋、ポップスター、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男……なんのつながりもない11人だったが、ある飛行機に同乗したことで、運命を共にする。飛行機は未曾有の巨大嵐に遭遇し、乗客は奇跡的に生還したかに見えたが―。
(以上「Amazon」の商品ページからの引用)

とあります。これ以上、私が書くネタバレになってしまうので、紹介を控えますが、前半部分、(飛行機が巨大嵐に遭遇するまでの)それぞれの登場人物の記述に、私はとても惹かれました。なんというか、これから一体、彼らに何が起こるのか、興味をひかれると共に、かれらの生活が、とても現代的で、その記述はとても文学性の高いものとなっています。

読んでいて、ふと感じたことは、この小説を、最初から漫画で書こうとすると、それはとても難しかったのではないかということです。その点において、この小説を通じて、「文学」が未だ持っている、ごく僅かな可能性を感じることができたことが、私にとっての驚きであり、喜びでした。

久々に海外小説を読み、貴重な読書体験を得ることができました。ふうっ、これからも機会を見つけて読書を続けていこうと決意を新たにした次第です。


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