SSブログ

上田紀行著「愛する意味」を読み終えました [本を読んでいる]

12月は、やはり師走ということもある上、15日から19日にかけて九州の実家に帰省したりしたこともあって、例月と比べて、かなりバタバタした毎日を送っています。このブログにおいて、私はなるべく時系列に記事を書くよう心掛けてはいるのですが、今月の出来事に限っては、書きやすいものから記事化することにします。何かと読みにくいかとは思いますが、何卒、ご容赦の程、宜しくお願いいたします。

先週の金曜日(12月22日)に、文化人類学者、医学博士で、東京工業大学教授の上田紀行(うえだ のりゆき 1958年~)の「愛する意味」(光文社新書)を読み終えました。この本はネットで紹介されているのを知り、興味を持ち、図書館で貸出予約をして借りてきたものです。内容は、

日本人が幸せになれないいちばん大きな原因は「愛していない」ことにあります。多くの人たちが「愛すること」よりも「愛されること」を優先してしまっている。恋愛でも、社会に対しても、常に周囲からの評価が気になってしまう。しかし、「愛されたい」「評価されたい」ということへの執着は、あなたをとても不自由にします。――感動のロングセラー『生きる意味』出版から14年。生きる意味の核心である「愛」についての熱い提言!(以上「Amzaon」商品ページにおける紹介文からの引用です)

というものでして、とても分かりやすくて読みやすいエッセイでした。

今の日本は、資本主経済システムの徹底した浸透により、「幸せ」の度合いさえも金銭で測るような風潮になってしまっています、その上、キリスト教のような一神教による「神からの絶対的な承認」も無い中で、人は「(他の人よりも)愛されたい(=承認されたい)病」に罹っているのではないかという問題提起は、とても説得力があります。そして、こうした社会システムから逃れ、自分自身を取り戻す心の動きである「愛すること」が必要なことだと筆者は説きます。

こうして私が書くと、まるでなにかの新興宗教のスローガンのように聞こえてしまいそうですが(汗)、本書はそんなことは全く無く、ある意味、とても論理的であり、説得力があります。私は思わず首肯した次第です。

「愛」という言葉は、今の日本人にとって、非常に難しい言葉の一つかと思います。本来(というか、絶対的に)愛は無償のものですが、今どき「無償の愛」と言われても、多くの方は、母親が自らの幼い乳飲み子に対して持つ愛情くらいしか、想像できないものになっているのかも知れません。現代社会という、様々な評価システムの中でがんじがらめになってしまっている私たちにとっては、他者に対して無償の愛を捧げるという行為自体、無理があるというか想像できないという方も多いかと思います。それは、とても勇気のいる行為であり、一歩間違えれば、自身が社会から孤立してしまったり、人生そのものを誤ってしまう危険すらあります。そうしたことも全て理解した上で「愛する」ことができる大人になって欲しいとこの本は説きます。それはある意味、とてもアナーキーでありながら、自我を回復し、幸せになる唯一の方法なのかもしれません。

61H3UQj8gqL._AC_UF1000,1000_QL80_.jpg
上田紀行著「愛する意味」(光文社新書)


共通テーマ:日記・雑感