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最近になって新たに発掘されたユーリ・エゴロフの未発表録音を紹介します [私の好きなピアニスト]

前の記事で、私の大好きな、幻のフランス人ピアニスト、アニュエル・ブンダヴォエ(Agnelle Bundervoët 1922~2015年)の放送録音等のCDのことを書きましたが、今回は、こちらも最近になって新たに発掘されたユーリ・エゴロフ(Youri Egorov 1954~1988年)の未発表録音を紹介しようと思います。

ユーリ・エゴロフはロシア、カザン生まれの、1988年にエイズのため、33歳の若さでこの世を去った夭折のピアニストですが、彼の没後も放送録音等の音源が精力的に発掘されています。本CDは1982年6月(もしくは7月)におけるフランス、ノアン・ロマンティック音楽祭でのライヴ録音でして以下の演奏曲が収録されています。

ベートーヴェン:ピアノのためのアンダンテ・ファヴォリ ヘ長調 WoO.57
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D.958
ショパン:ピアノのための12の練習曲 Op.10
ドビュッシー:映像 第1巻(ピアノのための)から 水の反映
       ピアノのための前奏曲第2巻 から 花火(No.12)

彼の演奏の特徴は何と言っても、その瑞々しい「タッチ」にあります。それは本当にクリアで美しいもので、それを見事にコントロールして、まるで泉から美しい水が湧き出るように「音楽」を紡いでいくのです。今回の録音ではショパンのエチュードが素晴らしいですね。実はどの曲も、弾き急ぎというか、(他の彼の録音とは違って)彼の高ぶる気持ちが迸ってしまっているような印象を受けるのですが、その分、このショパンのエチュードについては、とてもスリリングで聴いているこちらまでドキドキしてしまうような、そんな演奏となっています。

彼の演奏として最初に勧めるものではありませんが、私のような熱心なファンにとっては貴重な記録といえるのではないかと思います。

生前、それほど有名ではなかったにもかかわらず、没後、ここまで熱心に音源が発掘され続けているピアニストは本当に珍しいかと思います。本当にありがたいと言うか、こうして音源を発掘してくれた関係者の方々には感謝至極です。

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こちらが今回紹介したCD「ノアン音楽祭アーカイヴ Vol. 2 ユーリー・エゴロフと若き名手たち」(CD2枚組)。DISK2には、2015年チャイコフスキー・コンクール第3位のロシア人ピアニストであるセルゲイ・レドキンと、ポーランド人ピアニスト、シチェパン・コンチャルの演奏が収録されています。
ちなみにこれまで主にユーリ・エゴロフについて書いた記事は以下のとおりです。興味のある方は読んでみて下さい。
「私の好きなピアニスト(4)-ユーリ・エゴロフ(Youri Egorov)」
 →https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2009-09-14
「ユーリ・エゴロフの放送録音集(10CD)を聴きました」
 →https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2014-06-26
「ユーリー・エゴロフのライブ録音、放送録音集を聴きました」
 →https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21


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最近になってアニュエル・ブンダヴォエの昔の歴史的音源が新たに発掘されています [私の好きなピアニスト]

前にも紹介したことがある、私の大好きな、幻のフランスの女性ピアニスト、アニュエル・ブンダヴォエ(Agnelle Bundervoët 1922~2015年)ですが、最近になって以前の放送録音等がCD化されています。

ひとつめは ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲、サン=サーンスの ピアノ協奏曲第2番、そしてフランクの前奏曲、コラールとフーガが収められたもので、特にサン=サーンスの ピアノ協奏曲第2番はモノラルながら1976年、ジュネーヴ スイス・ロマンド放送によるライヴ録音でして、彼女の録音は1950年代のものが多い中で、1970年代のもの、それも熱気を帯びた素晴らしい演奏となっていて、大変貴重なものとなっています。

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こちらがそのCD(MELOCLASSIC)

そしてもうひとつは、フランス国立視聴覚研究所提供による音源を使用したシリーズ「Belle ame(ベルアーム)」。グレイト・フレンチ・ピアニズムと題された二枚組のCDでして、J.S.バッハのピアノ協奏曲第1番、ハチャトゥリヤンのピアノ協奏曲(前に紹介したものとは別の1964年録音)、ドビュッシーの「映像」第1集、ラヴェルの夜のガスパールの演奏を聴くことができます(他にイヴォンヌ・ルフェビュールの1973年のラストリサイタルのライブ録音が収録されています)。どちらも1950年代末から60年代前半の録音ばかりです。

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そしてこちらが「Belle ame(ベルアーム)」のグレイト・フレンチ・ピアニズム(スペクトラム・サウンド・レーベル)

中でもラヴェルの「夜のガスパール」の演奏は良いですね。まさしくダイナミックレンジの広い演奏でして、この演奏を聴いた私の母は「このピアノを弾いていているのは男の人かしら?」と言っていましたが、たしかにそう思わせるような、スケールのずば抜けた大きさがあります。以前にも書きましたが、彼女の弾くバッハ(シャコンヌ)、そしてリストの演奏は悪魔的とも言ってもよい大胆さがあり、一度、聴くと二度と忘れることができないものがありますが、この「夜のガスパール」もそれに似た魅力があります。

彼女は7歳からマルセイユ音楽院で学び、その後、パリ音楽院でラザール・レヴィの指導を受けました。第二次世界大戦後、ブンダヴォエは華々しくコンサート等で活躍し、1950年代には先に述べたバッハやリストなどのレコードも出しましたが、リューマチを患ったことと、そして1956年に離婚して子育てのための安定した生活が必要だったことで早くに演奏会活動を縮小、長年ヴェルサイユ音楽院の教授を務めました(この文章は Disk UnionのHPにおける「商品詳細情報」を全面的に引用したものです)。このため、彼女は幻のピアニストとなってしまいましたが、最近になって、こうした音源が発掘されCD化される程、(私を含め)一部には熱狂的なファンがいます。

前にも書きましたが、彼女の演奏はYoutubeに比較的多くアップされていますので、今まで聴いたことのない方は是非一度聴いてみて下さい。本当にまさしく「とんでもない」女性ピアニストです。

ちなみにこれまでアニュエル・ブンダヴォエについて書いた記事は以下のとおりとなります。興味のある方は是非、読んでみて下さい。
「私の好きなピアニスト(7)-アニュエル・ブンダヴォエ」
 →https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2014-07-09
「ブンダヴォエのオリジナルレコードを聴いてみました」
 →https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29


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マリラ・ジョナスのCDボックスセットを聴いてみました [私の好きなピアニスト]

6月末にモントリオールに出張中にマリラ・ジョナス(Maryla Jonas 1911~1959年)のCDボックスセットが発売されたことを書きましたが(その時の記事はこちら→http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2017-06-29、8月上旬にやっと入手、機会ある毎に聴いています。私は彼女の録音はすべてアナログ盤で入手して既に何度も聴いているのですが、こうして気軽にCDで、スクラッチノイズなく楽しめるようになり、感激もひとしおです。

私は彼女の演奏に、訳もなく惹かれてしまいます。気がつくといつの間にか夢中になって聴いている自分がいます。彼女の演奏の何が、私をここまで惹きつけるのかは分かりませんが、多分、テンポとその微妙なゆらぎに秘密が隠されているのではと思います。とはいえ、一旦聴き始めると、見事に心を掴まれてしまい、そんなことはどうでも良くなってしまいます。

本当に大好きです、というか愛してやみません。特にショパンのマズルカ、ノクターン、シューベルトのアンプロンプチュの演奏は最高ですね。他にまだ彼女の録音が遺されていて、今後発掘されることを願うばかりです。真の天才とは彼女のことをいうのでしょう。このCDボックスは私が今、一番大切にしている宝物です。まだ聴いたことがないのでしたら、是非、一度聴いてみてください。絶対後悔しない事を約束します。

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こちらが「The Maryla Jonas Story - Her Complete Piano Recordings Box set」。中のライナーノーツやオリジナルLPジャケットを忠実に再現したCDジャケットもとても素晴らしいものです。


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マリラ・ジョナスのCDボックスセットが発売されました [私の好きなピアニスト]

今週はカナダ、モントリオールに出張しているので、本来でしたらモントリオールの話題を記事にすべきところなのですが、ご容赦ください。というのも、今日、何気なく出張先のオフィスで、仕事の合間にネットを見ていたところ、これまで、何回もブログで記事にした、私がもっとも好きなポーランド出身の女性ピアニスト、マリラ・ジョナス(Maryla Jonas 1911~1959年)の全ての録音を収めたCDボックスセットが発売された事を知ったからです。これは私にとっては、十年に一度あるかどうか位の大ニュースです。

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こちらが今回発売された「The Maryla Jonas Story - Her Complete Piano Recordings Box set」

なんだか夢を見ているようです。マリラ・ジョナスは殆ど知られていないピアニストで、彼女を録音を収めたCDはこれまでPearlから出た一枚だけ、それも現在はとても入手が困難となっています。私はこれまでE-bayで、こつこつ彼女のSP、LPを集めていたのですが、今回、こんな形で発売されるなんて、とても信じられません。

前にも書きましたが、彼女の演奏は軽く聞き流すことができるようなものではなく、魂の深いところから、音楽が湧き出ている上、なんともいえない澄み切った抒情感のようなものも感じられるものです。時空を歪めさせるというか、「時間」の感覚をなくさせるような、そんな不思議な魅力が、彼女の演奏にはあります。その秘密は彼女のテンポの設定と、そのゆらぎにあると思うのですが、一度、聴き始めると、そんな屁理屈なんてどうでもよくなって、彼女の演奏にただただ魅せられてしまいます。

彼女の48年の短い生涯はまさに波乱にとんだものです。TowerRecords Onlineにおける紹介文を以下、引用しますと、

マリラ・ジョナスは、1911年5月、ワルシャワに生まれました。天才的才能を持ったピアニストとして、ジョナスは9歳の時ワルシャワでデビューし、パデレフスキの生徒となりました。彼女は1922年に国際ショパン賞を、翌年にはウィーンのベートーヴェン賞を受賞し、1926年からは全ヨーロッパでリサイタルを開くようになりました。しかし1939年、ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって、演奏活動の中断を余儀なくされ、彼女は強制収容所に収監。数週間後、彼女は自分の演奏を聴いたことがあるドイツ人高官の手助けを得て脱走、徒歩で数か月かけてベルリンのブラジル大使館まで325マイルを逃亡。これは後に「奇跡」と伝えられています。そこから、ジョナスはリスボン経由でリオデジャネイロへ亡命しました。肉体的・精神的に疲弊したジョナスは演奏活動をやめ、何カ月もサナトリウムで過ごします。夫、両親、兄弟がナチスに殺されたこともその状況に拍車をかけました。しかし同郷のアルトゥール・ルービンシュタインがジョナスにピアノ演奏への復帰を促したと言われ、1946年2月25日、ニューヨーク、カーネギー・ホールでアメリカ・デビューして成功を収め、ピアニストとして復活したのです。その見事な演奏は、特にニューヨーク・タイムズ紙のオリン・ダウンズや、作曲家でニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙のヴァージル・トムソンといった名うての評論家たちを夢中にさせたのでした。 その約5年後、ジョナスはシューマン「謝肉祭」を演奏中に体調を崩し、舞台袖に戻ったところで倒れました。すぐに回復し、ステージに戻ったジョナスは予定された演目を弾き終えましたが、再び演奏活動から離れ、結局1956年12月のカーネギー・ホールでのリサイタルが、最後の演奏となりました。1959年7月3日、ジョナスは極めて稀な血液の病気で48歳の生涯を閉じました。
(以上、TowerRecords Online HP「注目アイテム紹介」http://tower.jp/article/feature_item/2017/06/23/1106掲載の文章からの引用です)

というものです。

このCDボックスセットを一人でも多くの方に聞いてもらいたいと思います。海外では既に発売されていますが、日本のTowerRecords Onlineの発売予定日は8月4日。CD4枚組で2,216円(2017年6月29日現在)という安さです。収録曲は以下の通り、私の知る限りの、彼女の全ての録音が収められています。さっそく注文したのですが、届くのが本当に楽しみです。

ディスク:1
1. マズルカ 変ロ長調Op. posth. no. 2
2. マズルカ 第49番 ヘ短調Op.68 - 4
3. マズルカ 第43番 ト短調Op.67 - 2
4. マズルカ 第19番 ロ短調Op.30 - 2
5. 夜想曲 ホ短調Op.72 - 1
6. 夜想曲 嬰ハ短調Op. posth
7. ワルツ 第11番 変ト長調Op.70 - 1
8. ワルツ 第13番 変ニ長調Op.70 - 3
9. ワルツ 第9番 変ロ長調Op.71 - 2
10. マズルカ 第48番 ヘ長調Op.68 - 3
11. マズルカ ト長調Op. posth. no. 3
12. マズルカ 第35番 ハ短調Op.56 - 3
13. マズルカ 第27番 ホ短調Op.41 - 2
14. マズルカ 第29番 変イ長調Op.41 - 4
15. マズルカ 第18番 ハ短調Op.30 - 1
16. マズルカ 第16番 変イ長調Op.24 - 3
17. マズルカ 第50番 イ短調「ノートル・タン」Op. posth
18. マズルカ 第21番 嬰ハ短調Op.30 - 4

ディスク:2
1. マズルカ 第11番 ホ短調Op.17 - 2
2. マズルカ 第14番 ト短調Op.24 - 1
3. マズルカ 第13番 イ短調Op.17 - 4
4. マズルカ 第12番 変イ長調Op.17 - 4
5. マズルカ 第36番 イ短調Op.59 - 1
6. マズルカ 第22番 嬰ト短調Op.33 - 1
7. マズルカ 第45番 イ短調Op.67 - 4
8. マズルカ 第41番 嬰ハ短調Op.63 - 3
9. マズルカ 第9番 ハ長調Op.7 - 5
10. 夜想曲 第2番 変ホ長調Op.9 - 2
11. 夜想曲 第9番 ロ長調Op.32 - 1
12. 夜想曲 第6番 ト短調Op.15 - 3
13. 夜想曲 第1番 変ロ短調Op.9 - 1
14. 夜想曲 第15番 ヘ短調Op.55 - 1

ディスク:3
1. ポロネーズ 第1番 嬰ハ短調Op.26 - 1
2. 練習曲 第6番 変ホ短調Op.10 - 6
3. 練習曲 第2番 ヘ短調Op.25 - 2
4. ワルツ 第10番 ロ短調Op.69 - 2
5. 子守歌 変ニ長調Op.57
6. 即興曲 第1番 変イ長調Op.29
7. ワルツ 第7番 嬰ハ短調Op.64 - 2

ディスク:4
1. ヘンデル:『組曲 ト短調 HWV.432』より パッサカリア
2. ドゥシーク(ドゥセック):コンソレーション Op.62
3. J.W.バッハ:カプリッチョ ニ短調
4. モーツァルト:『ピアノ・ソナタ第9番イ長調K.311』より 「トルコ行進曲」
5. シューベルト(リスト編):セレナード S.560
6. ヴァージル・トムソン:『10の練習曲』より「For the Weaker Fingers "Music Box Lullaby"」
7. メンデルスゾーン:無言歌第5巻第1曲ト長調Op.62 - 1「5月のそよ風」
8. メンデルスゾーン:無言歌第8巻第4曲ト短調Op.102 - 4
9. ニコラウス:オルゴール
10. カゼッラ:『子どものための11の小品』より「ボレロ」「ギャロップ」
11. ロッシ:アンダンティーノ ト長調
12. ラモー:『新クラヴサン組曲集』より 「メヌエット ト長調 と ト短調」
13. シューベルト:即興曲 第3番D.899 - 3
(TowerRecords Onlineでは「D.899-4」となっていますが、これは誤りです)
14. シューベルト:『36の独創的舞曲D.365』と『34の感傷的なワルツD.779』より抜粋
15. シューマン:子供の情景 Op.15


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昨夜、自室でマリラ・ジョナスのレコードを聴きました [私の好きなピアニスト]

昨夜は、夕食後、少し時間があったので自室で、ポーランド生まれの女性ピアニスト、マリラ・ジョナス(Maryla Jonas 1911~1959年)の「Maryla Jonas plays piano miiniatures」と名付けられたレコードを聴いてみました。このLPに収録されている曲のうち、ヘンデルのパッサカリア以外はこれまでCD化されていないことから、私はこれまで長い間、なんとか聴いてみたいと願っていました。今回、E-bayでやっと入手することができたという訳です。

A面はヘンデル、ヤン・ラディスラフ・ドゥシーク、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハといった18世紀の作曲家の作品、B面はモーツァルト、メンデルスゾーンの良く知られた作品と共に、余り知られていない作曲家たちのピアノの小曲も収められています。これらの選曲はマリラ・ジョナス自身によるものでしょう。とても地味な印象を受けます。そして、一聴して私が感じたのは「厳しさ」でした。なんというか演奏者の真剣さがそのままダイレクトに伝わってくるというか、軽く聴き流すといったことが出来ない雰囲気があります。愛しんで弾いているというよりも、一つの芸術作品に真っ向から挑んでいるということなのだと思います。私はいつの間にか姿勢を正し、これらの演奏を真剣に聴くこととなりました。

マリラ・ジョナスの演奏には、何と言ったら良いのか、言葉にするのが難しいのですが、時空すら変えてしまうような特別な力としか言いようのないものを感じます。私はいつもその力の虜となり、魅せられてしまうのです。多分、その秘密は彼女のテンポの設定と、そのゆらぎにあるのではと思うのですが、気付くと(そんな事を忘れて)ただただ聴き入ってしまっている自分がいます。

今回も、マリラ・ジョナスの演奏を聴き、とても充実した時間を過ごすことができました。これで私は、これまで発表された彼女の演奏の全てを聴いたことになりますが、もっともっと、(できれば生演奏も含め)彼女の演奏を聴いてみたかったです。どこかに未発表の音源が眠っていて、そして、それが発掘されることを願わずにはいられません。なぜなら、彼女こそ、まさしく「天才」という言葉がふさわしいピアニストだったと思われるからです。

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「Maryla Jonas plays piano miiniatures」(LP)

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こちらはLPの裏面。写真をクリックすれば、拡大して見ることができます。


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ユーリー・エゴロフのライブ録音、放送録音集を聴きました [私の好きなピアニスト]

ユーリ・エゴロフ(Youri Egorov 1954~1988年)はロシア、カザン生まれで1988年にエイズのため、33歳の若さでこの世を去った夭折のピアニストですが、今年(2016年)になって、二つの未発表の音源が相次いでCD化されました。

一つは1980年4月3日、カリフォルニア、パサディナ・アンバサダー・オーディトリウムでのライブ音源で、
● モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.475
● シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17
● ショパン:12のエチュード Op.25
● ドビュッシー:水の反映
● リスト:ラ・カンパネラ
が収められています。

そしてもう一つは、彼が1974年のチャイコフスキー国際ピアノ・コンクールで第3位を獲得した1974年から、亡くなる前年となる1987年にかけての、VARA、TROSといったオランダの放送局に残した放送録音を集めたもの(2CD)で、
● チャイコフスキー:主題と変奏ヘ長調 Op.19-6(録音:1974年11月3日)
● チャイコフスキー:四季 Op.37bisより10月『秋の歌』(録音:1974年11月3日)
● ショスタコーヴィチ:前奏曲とフーガト長調 Op.87(録音:1974年11月3日)
● リスト:パガニーニの主題による大練習曲 S.141より『ラ・カンパネッラ』
 (録音:1974年11月3日)
● バルトーク:ピアノのための組曲 Op.14(録音:1981年5月25日)
● ブラームス:3つの間奏曲 Op.117(1983年4月22日)
● プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第3番イ短調 Op.28(1983年5月6日)
● D.スカルラッティ:ソナタ集~ニ短調 K.9、ニ短調 K.32、ロ短調 K.87、ト長調 K.125、
 ト長調 K.159、イ長調 K.322、ロ長調 K.380、ヘ長調 K.518(録音:1985年10月25日)
● ラヴェル:鏡(録音:1987年3月28日)
● チャイコフスキー:四季 Op.37bisより10月『秋の歌』(録音:1987年4月24日)
が収められています。

どちらのCDも素晴らしい演奏ばかりで、私はすっかり魅せられました。特に、カリフォルニアのライブ録音におけるシューマンやショパン、オランダの放送局に残した音源のうち、ブラームスやプロコヒエフ、スカルラッティ、そしてチャイフスキーの演奏では、エゴロフの美しいタッチが冴え渡っていて、聴いていて思わず目を瞑ってしまいます。特に87年の「秋の歌」の演奏については、その内省的な表現の深さに、私は語る言葉を見つけることができません。

こんな素晴らしい演奏が、今頃になって発掘されるなんて、今でも大勢のエゴロフの熱心なファンがいることの証左なのでしょう。かく言う私にとってもユーリ・エゴロフは特別なピアニストの一人です。何度も書いていますが彼の演奏の一番の特徴はその瑞々しい「タッチ」にあります。彼のタッチは、本当にクリアで美しいもので、それを見事にコントロールして、まるで泉から美しい水が湧き出るようにピュアで清冽な「音楽」を紡いでいくのです。

今朝も朝早く、6時前に目覚めてしまったので、私は一人、自宅のリビングでエゴロフのオランダ放送録音集のCDを聴き、本当に充実した、とても幸せな時間を過ごすことができました。このような音源を発見してくれた関係者の方々に感謝するばかりです。

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ユーリ・エゴロフ「1980年パサディナ・リサイタル~モーツァルト、シューマン、ショパン、ドビュッシー、リスト」/Youri Egorov : The 1980 Ambassador Auditorium Recital Pasadena California USA 

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ユーリー・エゴロフ「秋の歌~放送録音集」(2CD) /Youri Egorov : Autumn Song (2CD)


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ブリジット・エンゲラーの弾く、「チャイコフスキー ピアノ作品集」を聴きました [私の好きなピアニスト]

私事で恐縮ですが、先週の金曜日(2月6日)に53歳になりました。ホント、もう、これ以上は歳とらなくて良いです(苦笑)。歳をとって喜んでいたのは、一体いつ頃までだったのでしょう? もう、どこからみても中年のオッサンになってしまいましたが(泣)、とはいえ、これからも自分なりの目標を掲げて、また、一年頑張ってみようと決意を新たにしたところです。

今回はクラシック音楽、それも、私の大好きなピアノ音楽についての話です。

これまで、チャイコフスキーが作曲したピアノ小曲集「四季」については、私の大好きな曲集でありながら、なかなか(全集では)満足する演奏がなくて困っていました。そんな中、最近になって発見し、これぞ決定盤だと愛聴しているのがブリジット・エンゲラー(Brigitte Engerer 1952~2012年)が30歳、1982年に録音した、「四季」全曲を含む「チャイコフスキー ピアノ作品集」です。

このアルバムには「四季 Op.37a」の他、「ドゥムカ Op.59」「ユモレスク Op.10-2」「夜想曲 Op.19‐4」「無言歌 Op.2-3」「感傷的なワルツ Op.51-6」といった曲が収められています。ブリジット・エンゲラーはチュニジア出身のフランス人ピアニストですが、「1969年のロン=ティボー国際コンクールのピアノ部門で第6位を獲得し、モスクワ音楽院に招かれてスタニスラフ・ネイガウスの下で五年間研鑽を積んで」(以上、Wikipediaからの引用、語尾を一部変えています)いますので、ある意味、チャイコフスキーについてはお国物と言って良いくらい、得意にしています。

実際、このアルバムで聴くことのできる彼女の演奏は、テンポ、強弱の付け方等、どれをとっても「中庸」といってよいもので、安心して聴くことができる、素晴らしいものです。これはあくまで私見ですが,チャイコフスキーのピアノ独奏曲(特に小品)の演奏って、曲としてきちんと聴かせようとなると、その演奏は、実はなかなか難しいのではないかと思います。少し、乱暴な意見となりますが、「四季」の演奏についても、例えば、何人かの男性ピアニストでの演奏では、ロマンティックに弾き過ぎて、曲の全体的な構成が崩れてしまっているケースがありました。どちらかというと、女性ピアニストの、ロマンティックながらも、曲全体の構成を見失わない冷静さこそが、チャイコフスキーの小曲の演奏には必要なのではないかと思います。

その点で、ブリジット・エンゲラーの演奏は、まさにツボを心得たものです。私が特に好きな曲である、「四季」の六月と十月、そして「夜想曲」や「感傷的なワルツ」における、見事にコントロールされた、それでいて情感に満ちた演奏は素晴らしいです。特に、このアルバムの最後の曲である「感傷的なワルツ」は、曲、演奏のどちらも非の打ちどころのない演奏で、とても印象深く、かけがえのないものです。

もし、まだ聴いていらっしゃらないようでしたら、是非、一度聴いてみてください。チャイコフスキーのピアノ小曲集の決定盤ですよ。

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写真はブリジット・エンゲラー「チャイコフスキー ピアノ作品集」(CD)。もし、購入されるのなら、この一枚だけ購入することもできますが、これを含んだ、彼女のフランス・デッカ、フィリップスに残した録音を集めた「ブリジット・エンゲラーの芸術」と名付けられたCD6枚組のセットがとても安価で、また、他の演奏の水準も高く、お勧めです。
尚、私の大好きな曲である「十月」に限ると、イスラエラ・マーガリット(Israela Margalit)が「Romantic Piano Pieces」と名付けられたCDに録音した演奏(CD上は誤植で「十一月」となっていますが、実際は「十月」です)が、こちらもとても中庸かつ情感溢れたもので、特にお気に入りです。


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ブンダヴォエのオリジナルレコードを聴いてみました [私の好きなピアニスト]

先日、「私の好きなピアニスト」で紹介したアニュエル・ブンダヴォエ(Agnelle Bundervoët 1922年~)ですが、この間、運良く、仏デッカのオリジナルレコードを入手することができました。彼女の録音は希少なことから、好事家の間では非常な高値で取引されています。オリジナルのLPですと、二万、三万円で入手できればとても幸運で、場合によっては十万、二十万を超えるような高値で売られています。先日も都内のクラシック専門の中古レコード屋さんで、彼女のバッハのシャコンヌが収めされた12インチ盤が十万円で売られているのを見つけました。(その前にE-Bayで、同じLPが300$程度で出品されていましたが、すぐに売れてしまったようです)

今回、私が入手したのはEP(ドーナッツ)盤で、リストの小品が三曲収められているものです。オークションでなんとか六千円程度で落札することができました。こんなレコードを落札していながら、こういうことを言うのもなんですが(汗)、私は希少盤、オリジナル盤のコレクターではありません。そんな経済的余裕はまったくありませんし、私の所有しているLPは日本盤が多く、それも中古盤は一枚200円、300円といった、安価で入手したものばかりです。それでも、今回、こうして彼女のレコードを入手した理由は、一度、オリジナル盤の音がどのようなものなのか、彼女のピアノの音は一体、どんな音なのか、どうしても確認してみたかったからです。

彼女の録音はCDですと、過去、TAHRAで一度復刻されていますし、他にも自主制作のLP盤起こしのCD-Rでしたら、比較的容易に入手可能です。私はこれまで、これらのCD、CD-Rで彼女の演奏を楽しんできました。そして今回、オリジナル盤を聴いてみた感想は、確かにオリジナル盤の方が生々しく、本来の音の輝きを伝えてはいるのでしょうが、私の駄耳には復刻盤のCDやCD-Rで十分だということでした(勿論、収められている演奏自体はとても素晴らしいものです)。多分、これには私の再生装置の問題も大きく関係しているのでしょう。レコードを本当にきちんと鳴らそうとすると、私の再生システムではまったく不十分で、最低でも二百万円位はかけないと、レコードでCDを越える音を出すことはできません。本格的なレコードの再生システムを構築している方だけが、こうしたオリジナル盤の素晴らしさを引き出すことができるのでしょう。私には、まさしく今回のオリジナル盤は猫に小判ということになってしまいました(泣)。

とはいえ、実際にハイエンドなシステムで聴く、オリジナル盤の音は確かに素晴らしいものがあります。少し話がずれますが、(前にも紹介したように)CBSソニー盤(国内盤)のLPは日本人向けと称した、迷惑な音質加工がオリジナル音源に対して行われていて、かえって音質が劣ってしまっているので、私もクラシック音楽の中古レコードを購入する際はCBSソニー盤だけは、なるべく避けるようにしています。(と言いながら、安さに惹かれてつい購入してしまうのですが…)

私はクラシックについては、このCBSソニー盤以外は、オリジナル盤には拘らないのですが、ジャズとなると話は別です。ジャズでのオリジナルLPの音の素晴らしさというか国内盤との違いは、私の安物の再生システムでも、はっきりと分かります。ジャズのレコードに関しては、値段がそれほど変わらないのであればなるべくオリジナル盤を入手した方が良さそうです。(E-bay等を使えば、比較的安く、ジャズのオリジナル盤は入手可能のようです)

とはいえ、私はどうも、オーディオマニアではなく、音楽マニアということのようです。安上がりと言ってしまえばそれまでなのですが(苦笑)、私はそんな自分で良かったなと思うことしきりです。

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写真は、私が入手したアニュエル・ブンダヴォエのEP。以前、紹介した、四千円程度で入手したホロヴィッツのヒストリック・リターンのオリジナル未開封LPを越え、現在、私の所有する一番高価なレコードということになります。


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私の好きなピアニスト(7)-アニュエル・ブンダヴォエ(Agnelle Bundervoët) [私の好きなピアニスト]

私がアニュエル・ブンダヴォエ(Agnelle Bundervoët 1922年~)という、フランスの女性ピアニストのことを知ったのは、つい最近のことです。いつも、クラシック鑑賞の参考にさせて頂いている、とある方のブログの歴史的ピアニストの紹介サイトを眺めていると、見覚えのある、美しい女性の写真が載っていました。さっそく解説を読んでみると、このアニュエル・ブンダヴォエというフランスの女性ピアニストは、素晴らしい演奏で知られるものの、録音が少なく、また希少であることから「幻のピアニスト」と呼ばれていること等が分かってきました。また同時にTAHRAからかつて発売された「フランスの女性ピアニスト」と名付けられた二枚組のCDに、彼女の演奏が収録されていることも紹介されていました。

あれっ? このCDなら私は持っています。なるほど、そういうことだったのですね。私は、そのCDのジャケットに載っていたブンダヴォエの写真を何となく覚えていたから、今回このサイトに気付き、また興味を抱いたのでしょう。以前、このCDを購入した理由はなんといってもユーラ・ギュラー(Youra Guller 1895~1980年)のショパンのマズルカ(11曲)の演奏が収録されていたからでして、その演奏が収録されているDisk-1は何度も聴いていたものの、ブンダヴォエの演奏が収録されているDisk-2はこれまで一回も聴いたことがありませんでした(汗)。ちなみにDisk-2に収録されている彼女の演奏する曲目は以下の通りです。

・バッハ/ブゾーニ編:シャコンヌ
・リスト:メフィスト・ワルツ第1番
・リスト:スペイン狂詩曲
・シューマン:幻想小品集 Op.12-『夕べに』、『なぜに』
(録音はいずれも1954~57年)

こうして、やっと私はブンダヴォエの奏でるピアノを聴く機会を得たのですが、一聴したとたん、まさに、ど肝を抜かれました。何と言えば良いのでしょう。美しい容姿からは想像のつかない、スケールの大きい、ピアニズムの極致のような演奏です。なんとも大胆というか、ダイナミックレンジが超ド級と言えば良いのか、まさしく「音楽芸術」という言葉が相応しい演奏です。バッハも勿論、とても素晴らしいのですが、リストはまさしく絶品ですね。私はこんなに素晴らしい演奏をこれまで聴いたことがありません。このCDを前から持っていながら、今の今まで聴いていなかったなんて…と唖然とするばかりです。

慌てて、他の演奏も聴きたくなり、オークション等で他の録音を探し始めたのですが、彼女の演奏(録音)は本当に希少のようで、例えばオークション(E-bay)ですと、ブラームスの曲が収められたオリジナルのLP(フランスDECCA盤)はUS$2,500という、とんでもない値段で売られています(2014年7月9日現在)。まさしく幻のピアニストであり、録音ということのようです。

それでも丹念に探すと、何種類かの、LPから復刻されたCD-Rが発売されていたりしていて、入手は可能というか容易ですし、何と言ってもYoutubeには多くの彼女の録音がアップされていて、気軽に演奏を楽しむことができます。Youtubeにアップされている中では、ラヴェルの「夜のガスパール」の演奏は特に貴重なもので、また、その演奏たるや、本当に素晴らしいものです。というか、どの曲も一度、彼女の演奏を聴いてしまうと、他のが聴けなくなるというか、凡演に感じられてしまうほどです。それほど彼女の演奏の音楽性、芸術性はずば抜けていると思います。

私はこれまで40年以上、クラシック音楽、それもピアノ音楽を中心に聴いてきましたが、今回、アニュエル・ブンダヴォエの演奏を知ることができたことは本当にうれしいというか幸せなことでした。これから折に触れて、彼女の演奏を楽しみたいと思っています。

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写真は「Pianistes Franaises(CD二枚組)」(TAHRA)。現在、amazonではMP3でダウンロード販売されています。

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写真はアニュエル・ブンダヴォエのポートレート。


こちらはYoutubeにアップされている「Agnelle Bundervoet (Bundervoët) plays Ravel's Gaspard de la Nuit」。他にも多くの演奏がアップされていますので、是非聴いてみて下さい。

(2016年12月26日追記)
アニュエル・ブンダヴォエについては以下の記事でも紹介しています。良かったら読んでみて下さい。
「ブンダヴォエのオリジナルレコードを聴いてみました」
http://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2014-08-29

また、最近になって、ブンダヴォエの未公開録音が発掘され何枚かのCDが発売されました。今後、これらのCDを聴いた感想等もアップしたいと考えています。


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ユーリ・エゴロフの放送録音集(10CD)を聴きました [私の好きなピアニスト]

ユーリ・エゴロフ(Youri Egorov 1954~1988年)の放送録音を集めた10枚組のCDボックスが発売されたことは私にとって思いもよらないことで、本当に嬉しいことでした。以前も紹介しましたが、ユーリ・エゴロフはロシア、カザン生まれ、1976年に亡命し、1978年にニューヨーク・デビュー、1980年代は活動の拠点をヨーロッパに移して演奏活動を行ない、1988年にエイズのため、33歳の若さでこの世を去った夭折のピアニストです。

このピアニストの魅力は何と言っても、その「タッチ」にあります。、本当にクリアで美しいもので、それを見事にコントロールして、まるで泉から美しい水が湧き出るように「音楽」を紡いでいくのです。そのタッチから生み出される音楽はピュアという言葉がぴったりな、清冽なものです。

今回、発売されたCDボックスには既にCD化された音源もありますが、初出となる多くのピアノ協奏曲(ベートーヴェン、ショパン、ブラームス、ラフマニノフ、チャイコフスキー)や室内楽、独奏曲の演奏が収録されています。以前の記事でエゴロフの未発表録音ではと紹介したhttp://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2009-09-24、リストのラ・カンパネラも収録されていますね。私は、期待に胸を膨らませながら、これらの演奏をじっくりと聴いてみました。

どれも素晴らしい演奏だったのですが、私にとって特に印象的な演奏はブラームスのピアノ協奏曲第一番 Op.15でした。1981年8月のライブ演奏で、曲の最初から最後までテンションを上げながら、自在な表現で一気に盛り上げていくエゴロフの演奏は本当に素晴らしいものです。曲が終わると同時に、聴衆からの歓喜の声と盛大な拍手が聞こえますが、実際、私がその場にいたら、間違いなく、同様に「ブラボー」と叫んでいたことでしょう。

ブラームスのピアノ協奏曲第一番の演奏といえば、ワルター指揮ホロヴィッツの鬼気迫るライブ演奏やルービンシュタインやゼルキン、ギレリス等のものが名演として知られています。私はこれまでブルーノ・レオナルド・ゲルバー(Bruno Leonardo Gelber 1941年~)の演奏が一番のお気に入りだったのですが、今回に限っては、その座をユーリ・エゴロフに譲ることになりそうです。

1981年の演奏ですから、エゴロフは26歳ですね。ブラームスがこの曲を作曲したのが20代前半ですから、作曲家も演奏家もまだ20代という、若々しい曲であり、演奏ということになります。本当に、なんてフレッシュでかつ気迫に満ちた曲であり、演奏なのでしょうか。本当に感心しました。

このCDボックスには彼の最後のリサイタルでのライブ演奏であるシューベルトの楽興の時D.780も収録されています。これは、あまりにも美しく、そして哀しい、感動的な演奏であり、私にとっては涙なしには聴けないものです。そういう点からもピアノ音楽好きの方には必聴のCDボックスだと思います。是非、一度聴いてみてください。

このような録音を探し出して、販売してくれた関係者の方には感謝するばかりです。

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写真はユーリー・エゴロフ 「ア・ライフ・イン・ミュージック~放送録音集」(10CD)


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