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ブリジット・エンゲラーの弾く「ショパン・ノクターン全集」を入手しました [私の好きなピアニスト]

今週の火曜日に、用事を済ませに横浜中区役所に行った帰りに立ち寄った横浜 関内の中古レコード・CDショップ「ディスクユニオン 横浜関内店/関内ジャズ館」で、気になる中古CDを見つけました。それはチュニジア出身のフランスのピアニスト、ブリジット・エンゲラー(Brigitte Engerer 1952~2012年)が弾いた「ショパン・ノクターン全集」(CD二枚組、harmonia mundi輸入盤)です。

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ブリジット・エンゲラー「ショパン・ノクターン全集」(CD二枚組、harmonia mundi)

以前にも書きましたが(そのときの記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2015-02-09、彼女が弾く「チャイコフスキー ピアノ作品集」はチャイコフスキーのピアノ小曲集の決定盤であり、私の特に愛する演奏でして、この盤を含む、彼女のフランス・デッカ、フィリップスに残した録音を集めた「ブリジット・エンゲラーの芸術」と名付けられたCD6枚組のセットは私の宝物となっています。また、これも以前紹介しましたが(そのときの記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2018-03-25、Youtubeにアップされた「Chopin - Complete Nocturnes (Brigitte Engerer)」は2015年5月以来、なんと38,360,160 回(2021年6月10日現在)も再生された、まさしく「おばけ」と言って良い動画(というか音楽ファイル)となっていまして、まさに、その演奏のCDが、私の目の前で980円で売られていたという訳です。


こちらがYoutubeにアップされている「Chopin - Complete Nocturnes (Brigitte Engerer)」

いつも、切り詰めた生活をしなくてはならないはずにも関わらず、私の最近一ヶ月の中古レコード、CDの購入金額は一万円を優に超えていまして(5千円で購入したヴェルレのルイ・クープラン全集が痛かったです)、深く反省していた矢先にこのCDに出会ってしまい、まるでハムレットのように「購入するか、せざるべきか」悶々と悩むこととなりました。

結局、「これから暫くは中古レコード、CDを購入しない」ことを自らに課すことにして、このCDを購入(こらこらっ)、いそいそと自宅に持ち帰りました。

ブリジット・エンゲラーのピアノは「中庸」という言葉がぴったりな、情感に溢れたものです。なんというか、安心して聴くことができるというか、自然に耳に入ってくる演奏と言えば良いのでしょうか。悪く言えば、とりたてて特徴のない演奏という言い方もできるかもしれませんが、彼女ならではのロマンティックな演奏は、やはり非凡なものだと思います。

この「ショパン・ノクターン全集」は1993年の録音でして、彼女が40歳代になったばかりのときのものとなります。聴いていて本当に気持ち良いです。これも以前述べていますが(そのときの記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2014-08-28、ショパンのノクターンは、女性ピアニストの名演が多いですね。現在の私の一押しの演奏は、最近ド嵌りしているマリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)のもの(1993年、1994年録音)ですが、私が持っているもの(CD 国内盤)は選集でして(全集も出ているのですが、とても高くて私には手が出せません)、全集となると、このブリジット・エンゲラーの演奏ということになりそうです。

こうして私は、久しぶりにブリジット・エンゲラーの演奏を楽しみました、こんな素晴らしいピアニストが59歳の若さで、その生涯を終えたことは本当に残念でなりません。もっともっと活躍して欲しかったなぁと、私は彼女の早すぎる死を悼みました。


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マリア・ティーポが弾くクレメンティのソナタ集のレコードを入手しました [私の好きなピアニスト]

ここのところ、その演奏の素晴らしさに虜となっているイタリアのナポリ出身のピアニスト、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)ですが、先週、今度は彼女が弾くクレメンティのソナタ集のレコード(伊オリジナル盤 三枚組)を入手しました(汗)。

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こちらが今回、私が入手したマリア・ティーポが弾くクレメンティのピアノソナタ集のレコード(三枚組)。ピアノソナタ全集の第3巻となります。

実は、この全集(CD10枚組)はインターネット音楽配信サービス「Spotify」で気軽に聴くことができます(と言いながら、これまで私は熱心に聴いていませんでした)。そのため、これまで特に入手を考えていなかったのですが、先日、オリジナルのレコードが非常に安値でネットオークションに出品されているのを見つけて何の気なしに入札したところ、千円ちょっとで落札できてしまったという訳です(汗)。

このイタリアの作曲家、クレメンティ(Muzio Clementi 1752~1832年)は、何といってもピアノ初心者向けの教本である「ソナチネ」で良く知られているかと思います。かく言う私も、幼いころ、ピアノの先生であった母の下で(泣く泣く)やらされたという苦い思い出があります。そんな「近代ピアノ奏法の父」とまで呼ばれるクレメンティのピアノソナタというだけで、聴く気が起きないという方もいらっしゃるのではないでしょうか(まさしく私がこれに当たります)。しかしながら、このレコードで聴くことできる曲、そして演奏は本当に素晴らしいもので、私を心の底から驚かせました。実際、クレメンティのピアノソナタは当時、モーツァルトのものより人気があったようで、1782年には神聖ローマ帝国のローマ皇帝であり、オーストリア大公でもあったヨーゼフ二世からの要請で、モーツァルトとクレメンティが(あくまでも余興として)ピアノ競演をしたという記録も残っています。

また、何といってもマリア・ティーポの歌心溢れる演奏が本当に良いです。彼女が弾けば、どんな曲でも名曲になってしまうのではと思わせるほどです。ピアノ教師としても有名な彼女にとって、こうして「お国もの」となるクレメンティのソナタの全集を録音した背景には、教育的な意図もあったのかも知れませんが、とてもピアニスティックかつ音楽性に溢れた演奏は何度聴いてもまったく飽くことがありません。また、私が入手した三枚組には24曲のワルツも収められているのですが、伴奏に打楽器(タンバリン)が用いられた、その演奏は何とも鄙びた、趣のあるもので、一度聴いただけで忘れられないものです。本当に面白いと思い、そして感心しました。

私のように、クレメンティと聞いただけで「えーっ?」といった先入観を持ってしまう方が多いかと思いますが、是非、マリア・ティーポの演奏するピアノソナタに耳を傾けてみてください。美しく、そして豊かな音楽世界に吃驚されることになることでしょう。


こちらはYoutubeにアップされている「Maria Tipo plays Clementi "Didone abbandonata"」


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アメリカのジャズピアニスト、ビル・エバンスのCD「Time Remembered」を聴きました [私の好きなピアニスト]

少し前の話になってしまって恐縮ですが、先月病院に行った帰りに立ち寄った横浜中華街のジャズ喫茶「マシュマロ」で聴き、とても感銘を受けた演奏が、アメリカのジャズピアニスト、ビル・エバンス(Bill Evans 1929~1980)がソロで弾いた「Danny Boy」です。この初めて聴く、尋常とはいえない、孤独な魂の発露そのもののような演奏には本当に驚かされ、心を強く打たれました。

帰宅して、慌ててこの演奏が収められたアルバムを探すと「Time Remembered」だと分かりました。恥ずかしながら、私にとっては初めて聴くアルバム名です。さっそくインターネット音楽配信サービス「Spotify」で聴きながら調べてみたところ、「Danny Boy」から始まる5曲がピアノソロ、そして残りの8曲はピアノトリオでの演奏でして、最初の4曲が1962年、5曲目の「Some Other Time」が1958年、そしてピアノトリオによる演奏は1963年のライブアルバム「At Shelly's Manne-Hole」に収録しきれなかったものとのことでした。

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ビル・エバンス「Time Remembered」(CD)

特に最初のソロの5曲はビル・エバンス本人が気に入らずに80年代までオクラになっていたものとのことですが、特に最初の4曲はさもありなんと思わせるものです。それは演奏が良くないということではまったくなく、あまりにも私的な演奏のため、世間に出すのは憚られたのではという意味でです。しかし、何という演奏なのでしょう。最高のパートナーと目された天才ベーシスト、スコット・ラファロ(Scott LaFaro 1936~1961年)を突然の交通事故で失い、失意のどん底に陥った一人のジャズピアニストの、ボロボロになってしまった心の呟きがそのまま出てしまったような、そんな印象を受けます。聴いているだけで涙がこぼれてしまいそうです。

しかし、これまでビル・エバンスが好きだと公言しておきながら、これらの演奏をこれまで全く知らなかったのは、とても恥ずかしいというか、ダメですね、私は。深く恥じ入った次第です。

「Spotify」で聴くだけでは我慢できなくなった私は、結局、このアルバムのCD(輸入盤)をネットで注文、先週、やっと手元に届きました(私は古い人間で、気に入った録音は手元に置いておきたくなるタイプなのです…トホホッ)。ただ、音質が「Spotify」で聴くものと微妙に違うような気がします(CDの方がピアノの音がアーシーに聴こえます)。リマスターの差なのでしょうか? とにかく、このCDは私の宝物になりました。


こちらがYoutubeにアップされている「Jazz Piano - Bill Evans - Time Remembered [ Full Album ]」。こちらも私の持っているCDの音とは雰囲気が少し違うような気がします。


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またまた、イタリア人ピアニスト、マリア・ティーポのCDを入手しました [私の好きなピアニスト]

昨年から続いている私のマリア・ティーポ熱ですが、またまた。彼女の演奏が収められたCDを二種類、安価で入手しました(汗)。

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こちらは若かりしときのマリア・ティーポのポートレート。見てお分かりのように、とても美人でして(イングリット・バーグマンに似てます)、まさしく私のタイプです。(°O゜)☆\(^^;) バキ!

一枚目は、以前紹介した(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2021-05-17リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly 1953年~)、ロンドン・フィルハーモニー指揮、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)のピアノによるモーツァルト、ピアノ協奏曲第8番「リュッツォウ」、第9番「ジュノム」と同時期に録音された、モーツァルト、ピアノ協奏曲第20番、第21番が収められたCD(1983年録音、PLATZ国内盤)です。

前にも書きましたが50代、円熟期を迎えたマリア・ティーポのピアノはもちろん素晴らしいのですが、それに加えて、若きリッカルド・シャイーの指揮するロンドン・フィルハーモニーの清潔感溢れるサポートが良いです。録音も良く、このモーツァルトのピアノ協奏曲の決定盤と言って良いかと思います。ライナーノーツにおいて、音楽評論家の濱田滋郎氏(1935~2021年)はマリア・ティーポの演奏について「この人のピアノにはいつも「歌」があり、こまやかな「情感」の裏付けがある」と述べていますが、まさしくその通りでして、彼女のピアノの「音」はしっかりとした芯がありながらも、丸みを帯びた、美しくそして豊かなものです(ちなみに濱田滋郎氏は今年3月にお亡くなりになられました。謹んで哀悼の意を表します)。

そして、もう一つのCDが、彼女が20代半ばに米VOXに録音したモーツァルト、ピアノ協奏曲第21番、第25番、スカルラッティのピアノソナタ(12曲)を収めた二枚組の復刻盤(オリジナルは1956年発表)です。ピアノ協奏曲21番については、(前に書いたシャイー指揮の)1983年録音盤と聴き比べてみたのですが、録音技術の差はあるものの、まったく甲乙つけがたい演奏であることには驚かされました。これは私の勝手な思い込みかも知れませんが、1956年の彼女の演奏には、何とも言えない若さゆえの「華」が感じられます。またペルレア指揮のオケも本当に素晴らしいものです(シャイー指揮のものより良いかもしれません)。また、これは言うまでもないことですが25番の協奏曲も、とても良い演奏です。そして、スカルラッティのピアノソナタ(12曲)の録音ですが、これも本当に素晴らしいとしか言いようのないもので、私を驚喜させました。彼女はスカルラッティの演奏を非常に得意にしているようで、この1956年の演奏以外にも、(私の知る限り)1982年と1987年の二回、スカルラッティのピアノソナタを録音しています(残念ながら私は1982年の24曲のソナタ録音は未聴)。ここでは彼女の構成力が本当に光っていて、その、けれんみのまったくない、自然にすっと耳に入ってくる豊かな音楽世界に私は魅了されました。これは本当に素晴らしい演奏です。

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こちらが今回、私が入手したマリア・ティーポのCD。どちらもアマゾンで中古盤を購入したのですが、どちらも千円台という安さでした。VOX盤の方は比較的入手が容易ですので(インターネット音楽配信サービス「Spotify」でも聴くことができます)、是非、未聴の方は聴いてみて下さい。

こうして私は彼女のピアノを存分に楽しみました。こうしてみると、彼女の録音は全て良いですね。今は、先日ネットオークションで安価で落札したクレメンティのピアノソナタ集のレコード(伊オリジナル盤三枚組)が届くのを心待ちにしています。今度はどんな演奏で私を驚かせてくれるのでしょう?本当に楽しみです。


こちらは2020年のクリスマス・イブにYoutubeにアップされた彼女のライブ音源「Maria Tipo Piano Recital - Montevideo 1969」です。1969年8月7日の演奏だそうですが、今までCD化などはされていないと思います。ここでは彼女の主要なレパートリーとなるスカルラッティ、ショパン以外の、シューベルト、ドビュッシー、ラベル、リストの、とても貴重な演奏を聴くことができます。そしてアンコールでは、なんとスクリャービンのエチュードを弾いています(このスクリャービンのエチュード演奏についてはなぜか録音状態が悪いです)。ライブならではの、スタジオ・レコーディングで受ける印象とは少し違った「ナポリの女ホロヴィッツ」と言われた彼女の演奏の魅力を存分に味わうことができます。ここで聴ける聴衆の熱狂ぶりはものすごいものです。


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ネットオークションでイタリア人ピアニスト、マリア・ティーポのCDを運良く安価で入手しました [私の好きなピアニスト]

先日、ぼんやりとネットオークションを眺めていたところ、気になるCDが(即決価格1000円程で)出品されているのを発見、すかさず落札したのが、リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly 1953年~)、ロンドン・フィルハーモニー指揮、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)のピアノによるモーツァルト、ピアノ協奏曲第8番「リュッツォウ」、第9番「ジュノム」が収められたCD(1983年録音、PLATZ国内盤)です。

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こちらが今回、私が入手したCD

これまで何回か、このイタリアのナポリ出身のピアニスト、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)の録音を紹介していますが、ピアノ協奏曲の演奏は初めてとなります。これも本当に素晴らしいものです。特に第9番「ジュノム」は曲自体の良さ(特に第二楽章ハ短調)も相まって、聴いた時の感動はひとしおでした。

私はこれまでマリア・ティーポのことを書いた記事はこちら
「今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(1)」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-06-29
「今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(2)」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-08-04
「横浜の中古レコードショップでとても珍しいレコードを手に入れました」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2021-05-04

彼女の明るく、そして丸みを帯びた美しい音はモーツァルトのピアノ協奏曲にはぴったりです。そしてこの演奏で特筆すべきは、同じイタリア出身のリッカルド・シャイーの指揮するロンドン・フィルハーモニーの清潔感溢れる好演です。同じ組み合わせでモーツァルトのピアノ協奏曲第20番、第21番の録音もあるようなので、こちらもいつか入手して聴いてみたいと願っています。ちなみに、このCDのライナーノーツで、映画俳優、オペラ演出家の三谷礼二氏(1934年~1991年)は彼女を「ティーポこそ最高のモーツァルト弾き!」と称した上で、

全体の構成がしっかりととらえられていて、あくまでその中で独特の旋律感をだすのも、ラテン人ティーポの美質であろう。特にモーツァルト特有の、音域が上向していくときの、音色の選択こそ、ティーポの美質の中の最上のものだ。それは、作品の構造との関係の中で、しばしば甘美で、しばしば独特の憂いを帯びるが、この際の濡れたようなメランコリックな美しさこそ、ティーポのモーツァルトの独壇場なのだ。
(以上、本CD、三谷礼二氏によるライナーノーツからの引用です)

と書いていますが、まさしくその通りだと、深く首肯した次第です。

マリア・ティーポは録音がそれほど多くない上、現在、入手困難なこともあって、「幻のピアニスト」と呼ばれていますが、幻のままにしておくにはあまりにも、もったいないピアニストです。現在、彼女のレコードやCDは国内外のネットオークションでは高値で取引されていて、なかなか私には手が出せません。彼女の録音がいつか、まとまった形で手軽に入手できるようになることを祈ってやみません。


こちらは今年3月にYoutubeにアップされた「Mozart Piano Concerto No 27 B flat major K 595 Maria Tipo Hans Vonk」。演奏日時等は明記されていませんが、別にアップされている動画(こちらは第一楽章のみ)と同一演奏のようですので、1991年5月11日、ドイツ、ケルンでのものだと思われます。動画から伺える、すり鉢状のホールは、まさしく「ケルン・フィルハーモニー」です。


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横浜の中古レコードショップでとても珍しいレコードを手に入れました [私の好きなピアニスト]

先日、友人との待ち合わせ時間まで少し時間があったので、横浜 関内の中古レコード・CDショップ「ディスクユニオン 横浜関内店/関内ジャズ館」に立ち寄ったときに、とても珍しいレコードを見つけました。

それはイタリアのナポリ出身のピアニスト、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)が弾いた、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」「ピアノ・ソナタ第二番」が収められたレコード(伊盤)です。マリア・ティーポにはシューマンの「子供の情景」「花の曲」「交響的練習曲 op.13」を収録したCDがあることは知っていましたが(ネットオークションでも出品されていますが、とても高価で私には手が出せません)、「ダヴィッド同盟舞曲集」や「ピアノ・ソナタ第二番」も録音していたことは知りませんでした。値札を見ると980円と手頃でしたので、慌てて購入して大切に自宅に待ち帰りました。

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こちらが今回私が入手した、マリア・ティーポが演奏する「ダヴィッド同盟舞曲集」「ピアノ・ソナタ第二番」が収められたレコード

さっそく自室で聴いてみたのですが、とても盤質が悪く、音の悪さが気になってしまって音楽に集中できません。「まあ、安かったし、こんなものなのかなあ…」と思いつつも、もしかしたらと、以前記事でも紹介した、ケルヒャーの窓用バキュームクリーナーを使ったレコードの洗浄方法(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-05-04を試してみることにしました。すると見事に復活、今度はノイズの無い見事な音質で聴くことができました。

そして改めて聴いた彼女の演奏ですが、本当に素晴らしいもので私を驚喜させました。彼女の演奏の魅力は「見事なテクニックに支えられた骨太で豊かな音楽性」ということになるかと思うのですが、これらのシューマンの演奏においては、時には気まぐれで小難しいとも思える「ロマンティック(「形式にとらわれない」という意味です)」なシューマンの音楽が極めて分かりやすいものになっています。「ダヴィッド同盟舞曲集」「ピアノ・ソナタ第二番」、どちらの演奏も素晴らしいのですが、特に「ダヴィッド同盟舞曲集」の演奏は秀逸なものです。私は、まさしくシューマンらしいという言葉がぴったりの、この曲集をこれまでうまく理解することが出来ていませんでしたが、マリア・ティーポの演奏を聴いて、初めて分かったような気がしました。そういう意味でも、この曲の私にとっての決定盤です。

「ピアノ・ソナタ第二番」の方は、私はこれまでアルゲリッチの演奏で聴いたことがあったかと思うのですが、マリア・ティーポの演奏も素晴らしいものです。「ダヴィッド同盟舞曲集」のときと同様、彼女の演奏には卓越した構成力が感じられます。これはバッハの演奏等を通じて常々感じていたのですが、こういうロマン派の音楽の演奏においてこそ、その恩恵に預かることができます。いやあ、ただただ感心するばかりです。

こうして私は、本当に素晴らしいシューマンの演奏に接することができ、このレコードは私の宝物になりました。こうした、なかなか手に入らない稀少盤を紹介するのは、なんだか自慢しているみたいで気がひけるのですが、余りにも素晴らしい演奏だったので、今回は敢えて紹介させていただきました。こういう演奏が埋もれてしまっているのは本当にもったいないと思います。多くの皆さんに聴いてもらいたいと願うばかりです。


こちらはYoutubeにアップされている「Maria Tipo ~ Schumann Kinderszenen, op 15」。テンポを遅めにとった情緒に溢れた演奏で、こちらも見事なものです。

私がこれまでマリア・ティーポのことを書いた記事はこちらです、もし良かったら読んでみて下さい。
「今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(1)」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-06-29
「今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(2)」
 →https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-08-04


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今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(2) [私の好きなピアニスト]

以前、イタリアの女性ピアニスト、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)のライブCDに深く感動し、ショパンのバラード全曲が収録されたCDも入手、その豊かな才能とテクニックを再確認したことを書きましたが(その時の記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.ss-blog.jp/2020-06-29、その後も彼女の録音をよく聴いています。

先日、ネットオークションで彼女のバッハの録音を集めたCD5枚組を運よく落札することができました。このCDセットには六つのパルティータとゴルトベルク変奏曲、そしてブゾーニ(Ferruccio Busoni 1866~1924年)の編曲集やその他小曲集が収められています。このうちパルティータとゴルトベルク変奏曲については、既にインターネット音楽配信サービス「Spotify」で聴いていましたが、こうしてCDでじっくり聴いてみるとますます、彼女の明るく骨太で豊かな音楽性に魅了されます(私は未だに音楽はCD聴取が中心の、古い人間なのです)。どちらも(グレン・グールドが行ったアプローチとは正反対の意味において)ピアノ演奏の一つの決定盤といって良いかと思います。

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マリア・ティーポ「Bach: Works for Piano」(CD5枚組)

前にも書きましたが、彼女の演奏は、ピアノという楽器の持つ能力をフルに発揮させたものでして、それを支えるのは高いテクニックです。これらバッハの演奏においても同様でして、濃密といってもよいピアノ音楽の世界が繰り広げられています。そして、これらのバッハ演奏の中でも注目すべきはブゾーニ(Ferruccio Busoni 1866~1924年)のバッハ編曲を集めた一枚です。というのも、彼女の母エルシリア・カヴァッロはブゾーニの弟子でして、マリア・ティーポはこの母からピアノの手解きを受けていますので、彼女はブゾーニ直系の孫弟子ということになるからです。

彼女のブゾーニのバッハ編曲集の演奏を一言でいえば、ロマンティックという言葉がぴったりかと思います。それはとても純度が高く、そして密度の濃いものでして、さらっと聴き流す訳にはいかないものです。いやあ、なかなか、こういう演奏には出会えないものです。貴重な音楽体験を得ることができました。

このCD5枚組は、私の宝物となりました。それ以外にも彼女のショパンのノクターンやモーツァルトの協奏曲の演奏をCDや音楽配信サービスで楽しんでいます。本当に魅力的なピアニストです。


こちらはYoutubeにアップされている「Johann Sebastian Bach, Maria Tipo plays the Ferruccio Busoni Transcriptions」


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今頃になって、マリア・ティーポというイタリアの女性ピアニストを知りました(1) [私の好きなピアニスト]

先日、東京 神保町の中古レコード・CDショップ「富士レコード社」を訪れた時に見つけ、何となく気になって(安価にて)手に入れた中古CDが、イタリア ナポリ出身の女性ピアニスト、マリア・ティーポ(Maria Tipo 1931年~)の1979年、スイス ルガーノでのライブ録音です。

私は、このピアニストについては、かろうじて名前を知っていた程度だったのですが、今回、モーツァルト、ベートーヴェンのピアノソナタ、そしてショパンのバラード全曲等が収められたCD(伊Aura)を聴き、「ふくよか」という言葉がぴったりの、音楽性に溢れた見事な演奏に驚嘆しました。ピアノという楽器の持つ能力をフルに発揮させた演奏といった感じでしょうか、(聴いているうちに)「純粋芸術」という言葉が浮かんできます。同じイタリアの名ヴァイオリニスト、ジョコンダ・デ・ヴィート(Gioconda de Vito 1907~1994年)のピアノ版といった感じで、イタリア人ならではの生命力豊かな、明るく骨太で豊かな音楽性が感じられるピアニストです。


Youtubeにアップされている、私が入手したCDと同録音となる「Chopin - Maria Tipo (1979, live, Lugano) 4 Ballades」、ほかにも同じくベートーヴェンのピアノソナタ30番もYoutubeで聴くことができます。Youtubeで「Maria Tipo」を検索してみてください。

慌てて、インターネット音楽配信サービス「Spotify」で、彼女の他の録音(バッハのパルティータ、ゴルトベルク変奏曲等)を聴いてみたのですが、どれもピアノの能力をフルに生かした、素晴らしい演奏ばかりです。聴いていると、これらが最初からピアノの為に作曲された曲であったかのような錯覚を覚えます。それを裏打ちするのが、彼女の見事なテクニックです。「ナポリの女ホロヴィッツ」の異名を持つとのことですが、本当に魅力的なピアニストです。彼女の演奏をこれまで一度も聴いていなかったなんてと自分の無知さを恥じた次第です。

その後、ショパンのバラード(全曲)については、同じく1979年のスタジオ録音が収められたCDも手に入れて聴いてみたのですが、彼女の豊かな才能とテクニックを再確認することとなりました。

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こちらがマリア・ティーポによるショパンバラード全曲のスタジオ録音が収められたCD(リマスター盤)

こうして今回、私はまた、とても魅力的なピアニストを知ることになりました。世界には、まだまだ私の知らない素敵な曲があり、そして素晴らしい音楽家がいます。私の拙い音楽鑑賞の趣味の世界が果てることは、まずなさそうです。


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ビル・エバンスの「Everybody Digs Bill Evans」を聴いて、既に彼の音楽が完成されていたことに驚きました [私の好きなピアニスト]

これまで何回か書いていますが、ビル・エバンス(Bill Evans 1929~1980)は私にとって特別なジャズ・ピアニストです。大学時代に彼のRiverside時代の四部作、「Portrait in Jazz」「Waltz for Debby」「Explorations」「Sunday At The Village Vanguard」を聴き、ジャズピアノの魅力を知ることになりました。その後、長い間、私は彼の作品を聴き続けてきたのですが、デビュー2枚目となる、1958年に発表された「Everybody Digs Bill Evans」については、何故かLPもCDも持っておらず、これまでジャズ喫茶でかかっているのを聴いたり、ラジオから流れる本アルバムの収録曲である「ピース・ピース」を何回か聴いた程度でした。

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こちらがビル・エバンス「Everybody Digs Bill Evans」。このアルバムのジャケットはマイルス・デイビス,ジョージ・シアリング,アーマッド・ジャマル、そしてジュリアン・キャノンボール・アダレイが賛辞を記して、サインをしているというものですが、デザイン的にも秀逸なものです。

先週、ふとその事実に気付き、音楽配信サービス「Spotify」で腰をすえて聴いてみました。そして、今まで中途半端にしか本アルバムを聴いていなかったことに深く恥じいる結果となりました。皆さんは既にご存知のことと思いますが、これは本当に素晴らしい作品です。

このアルバムについてはAmazonでのhananusubito氏による「初期(過渡期)に見せた、クラシックとの融合、独自の解釈が光る快作」と題されたカスタマーレビュー(→https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1XY3SI1WMSKKB/ref=cm_cr_dp_d_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=B01I5BUADCが、この盤の魅力と特色を見事に解説していて、参考になります。

この歳になって、こうして、これまで余り聴いていなかったビル・エバンスの傑作をまた一枚、じっくりと聴くことができて、本当に嬉しいです。もし、聴いたことがないようでしたら是非、一度聴いてみて下さい。デビュー後わずか2枚目のリーダー作で、彼の音楽は既に完成されていたという事実に驚かれるかと思います。


こちらがYoutubeにアップされているビル・エバンスの「Everybody Digs Bill Evans」。曲が終わると自動的に次の曲に移るようになっていますので、全曲を通して聴くことができます。


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お気に入りのバロック専門のインターネットラジオ局から、とてもロマンティックなピアノ曲が流れてきました [私の好きなピアニスト]

先日、会社の執務室で、お気に入りのバロック専門のインターネットラジオ局(Otto's Baroque Music Radio)を聴いていると、とてもロマンティックなピアノ曲が流れてきました。慌てて曲名と演奏者を確認するとフランスのフランスの作曲家・オルガニスト・ハープシコード奏者であるクロード=ベニーニュ・バルバトル(Claude-Bénigne Balbastre 1724~1799年)の「ロマンス」という曲で、演奏者はなんと、私の大好きなピアニストであるユーラ・ギュラー(Youra Guller 1895~1980)でした。

さっそく自宅で確認してみたところ、「The Art of YOURA GULLER」(英Nimbus)に、その演奏が収録されています。このCD(LP)は、これまで何回も聴いてきたはずなのに、私はすっかり忘れてしまっていたようです。(´-`;)トホホ

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ユーラー・ギュラー「The Art of YOURA GULLER」(CD)、このCDについて、以前書いた記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2009-09-09となります。

改めて聴き直してみたのですが、3分足らずの小曲ながら、とてもロマンティックで素敵な曲です。作曲したクロード=ベニーニュ・バルバトルについてはWikipediaによると、

バルバトルの父親はオルガニストで、2度の結婚で18人の子供がいた。父親から音楽の手ほどきを受け、後にクロード・ラモー(ジャン=フィリップ・ラモーの弟)に師事した。その後ジャン=フィリップ・ラモーの後押しもあり、1750年にパリへ渡った後1755年にコンセール・スピリチュエルでデビュー。さらに1760年にノートルダム大聖堂のオルガニストに就任。1776年にはルイ16世の弟プロヴァンス伯(後のルイ18世)付きのオルガニストに指名され、マリー・アントワネットにもクラヴサンの指導を行うなど権勢を誇った。しかし、フランス革命の勃発によりその地位を失い、晩年はラ・マルセイエーズ、サ・イラなどの革命歌を編曲しつつ貧困のうちに没した。
(以上「Wikipedia」の解説文の引用です)

とのことで、私にとっては、初めてきちんと知ることとなった作曲家ですが、多くのオルガンやクラブサン曲を遺していて、インターネット音楽配信サービスのSpotifyやYoutubeで色々な曲を聴くことができます。

それにしても、この曲はなんてロマンティックでチャーミングな曲なのでしょう。以前の記事でも書きましたが「ロマンス」と名付けられた曲は本当に素敵な曲が多いですよね(前にブルッフの「ロマンス」について書いた記事はこちら→https://syoso-chunen.blog.so-net.ne.jp/2010-08-12

お盆を過ぎて、暑さも少し和らぎましたが、私にとって一服の清涼剤となりました。


こちらはYoutubeにアップされているクロード=ベニーニュ・バルバトルの「ロマンス」。演奏者は記載ないものの、ユーラ・ギュラーだと思われます。


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