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今朝、自室で村上春樹著「街とその不確かな壁」を読み終えました [本を読んでいる]

今朝、自宅の四畳ほどの屋根裏部屋の自室で、村上春樹著「街とその不確かな壁」を読み終えました。この小説は彼にとって6年ぶりの最新長編ということで話題になっているものです。私は妻から背中を押される形で、先週の日曜日に新刊を購入し、昨日から本格的に読み始めて、なんとか読み終えることができました。

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村上春樹著「街とその不確かな壁」(新潮社)

著者が「あとがき」で述べていますが、この小説は1980年に「文學界」に発表された同名の中編小説を大幅に書き直したものだそうです。結果的に以前は原稿用紙150枚程度だった、その小説は今回、1200枚もの長編小説へと生まれ変わっているとのこと。著者は、最初に発表した中編小説が「どうしても納得がいかず、書籍化はしなかった」と、そして「あとがき」の別のところでは「未完成」であり、「未熟性」があったと書いています。そうした経緯もあって、こうして約40年ぶりに書き直されたものです。

しかしながら、私はこの長編小説を読み終えた後、今回の改訂とでもいうべきものが成功しているとは、到底思えませんでした。読み始めた最初の頃は、それこそ「読書の悦楽」を味わっていたのですが、途中から不安を覚えるようになり、そして読み終えた時には少し落胆しました。読了後の最初の雑感は「この小説は、ひたすら同じ場所をグルグルと廻っている…」というものです。なんといえば良いのか、有り体に言えば、モチーフがこれだけの長編小説に足り得るだけの力をそもそも持ち得ていないように思われるのです。私自身は最初の同名の中編小説を読んでいないので、なんとも確信めいたことは言えないのですが、結果的に著者の自己満足とまでは言いませんが、ただ饒舌になっただけではないかという思いを拭い去ることはできませんでした。

これまで読んできた村上春樹の小説の中で、ここまで落胆したのは、もしかしたら初めてかもしれません。もしかしたら、これは私の加齢による頭の衰え、文学的感受性の低下によるものかもしれないところが怖いところですが(汗)、それでも私は、この作品については厳しい評価を下さざるを得ません。家族や他の人に薦めることはないでしょう。期待が大きかった分、少し残念な読書体験となりました。


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