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ベルンハルト・シュリンクの「週末」を読み終えました [本を読んでいる]

今朝、通勤電車の中でベルンハルト・シュリンクの「週末」を読み終えました。私にとって彼の作品を読むのは昔、「朗読者」を読んで以来、二作目となります。内容は、

かつて赤軍派テロを首謀した男が、恩赦を受けて20年ぶりに出所した。姉は郊外の邸宅を準備し、旧友たちを呼び寄せる。密告者は誰だったのかと訝る元テロリスト。遠い日の失恋に思いをめぐらすジャーナリスト。9.11テロについて考え続ける英語教師。旧友たちの和解を願う女性牧師。そして、邸宅に現れた謎の若者。やがて苦い真実が明らかになり、未来への祈りが静かに湧き上がる―。『朗読者』の著者による「もう一つの戦争」の物語。
(以上「BOOK」データベースからの引用)

というもので、私にとって、初めて出会った「9.11」を扱った小説でした。
本の訳者あとがきにも書かれているのですが、まるで密度の濃い室内劇を観ているかのような感じで、非常に高い緊張感の下、それぞれの登場人物の物の考え方、感じ方、生き方といったものが交錯していきます。その関わり合いかたは到底単純なものではなく、とても複雑で奥の深いものです。そして、それぞれの登場人物はそうした関わり合いの中で、自身を次第に変えていきます。その過程が非常に細やか、かつ丁寧に書かれています。そして、最後に、日常的とはいえないものの、なんとも些細なことで、皆が協力し、それを成し得、そして、舞台から去っていく、その過程を追いかけながら、私は自分の中から湧き出る、静かな感動に包まれていました。
実は小説を読むのは久しぶりです。最近は論理学の本ばかりを読んでいまして、ここ1、2週間は飯田隆著「言語哲学大全 第1巻」を読んでいる最中だったのですが、かなり前に図書館に予約していたこの本が、このタイミングで借りることができたので、一旦「言語哲学大全」の方を中断し、この本を先に読んだ次第です。このような良書に会えて良かったです
小説は「人生」を考えさせてくれます。たまには、きちんとこうした小説も読まなくてはと痛感した次第です。

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写真はベルンハルト・シュリンク「週末」(新潮社)

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